プレスリリース
持続可能なソフトウェアイノベーションのために。シードラウンド資金調達完了の Epics DAO ファウンダーが語る今までとこれから
エルソウルラボは、オープンソースソフトウェア開発のリソース不足を解決し、イノベーションの促進に貢献することをビジョンにするオランダのWeb3サービス開発会社です。
このストーリーでは、「深刻なリソース不足に陥っているオープンソース開発をトークンエコノミクスとゲーミフィケーションにより活性化させ、ソフトウェアによるイノベーションを持続可能なものにする」Epics DAO誕生の裏側について、代表の川崎文武が語ります。
IT・デジタルの民主化を目指した最初の起業
私は新卒で入社した楽天トラベル在籍時、デジタル・インターネットの力を活かすことができれば多くの人に良い体験を届けることができるようになるのだけれど、良い体験を提供している組織は必ずしもデジタルやインターネットが得意では無いという課題に直面しました。
実際にデジタルやインターネットとは無縁だった、船でしか行くことのできない孤島にある旅館へ通い詰め楽天トラベルを導入し、上手く活用できるようサポートを行うと、顧客の予約形態の変化から減少傾向にあった宿泊者数がみるみるうちに回復し再び人気の宿となったという経験をしました。
それらの経験より2012年、「IT・デジタルの民主化」を掲げ国内観光業に向けて総合的なITコンサル・サポートを提供するエルソウル株式会社を設立。元々アナログな現場にデジタルを取り入れて、既存の仕事を効率化しながら、新しいIT施策に時間を投資していくというのが基本戦略でした。
海外SaaSのような業務ソフトウェアが欲しい
当時グローバルではSalesforce等のSaaSプロダクトが台頭し始めていて、特定のタスクを行うのに適したインターフェイスのアプリや、API連携によるデータ活用は生産性を飛躍的に高めていました。
そういったツールを現場に導入して生産性を高めていこうとしたのですが、いざ観光業特有のタスクをこなせるツールとなってみると全く見つかりません。
業界には旧式のシステムしか存在しませんでした。パッと見て使い始めることができそうなアプリやグローバルSaaSが実現しているようなデータ活用には程遠い環境でした。
グローバルSaaSとの差は何なのでしょうか?調べていくと、グローバルSaaSはオープンソースソフトウェアとそれを基盤としたクラウドを存分に活用していました。
当時企業のオープンソースソフトウェアコード率はグローバルで見ても10%ほどで、メインの選択肢ではなく、システム開発会社はそれぞれ自社でシステムやアプリを開発するノウハウを抱え、知的資産として自社の開発ツールに投資をしていくのが普通で、私たちが主戦場としていた宿泊業界のシステムにおいてもそういう環境でした。100社あれば100通りの開発方法があり、それぞれが知識を共有することはありませんでした。
一方でオープンソースソフトウェアの開発は知識をオープンにし、グローバルに誰でも開発に協力できるようにしました。結果としてイノベーションが進んだのはオープンソースソフトウェアの方でした。新興SaaS勢は、オープンソースソフトウェアを活用して品質の高いプロダクトを低コストで素早く構築し、レガシーなシステムに差をつけていきました。
オープンソースソフトウェアとの出会いと、クラウド認定パートナー取得
オープンソースソフトウェアを調べていく中で、ある事実に気づくことになります。
それまでシステムやアプリ開発というのは、コンピュータ・サイエンスを学んだようなプロフェッショナルにのみ許された特別なものと捉えていました。
しかし、オープンソースソフトウェアを見ていくと、そのプロフェッショナルな先人たちは偉大なツールを遺 (のこ) していってくださっている。
なんとその偉大なツール群は、たとえコンピュータ・サイエンスを学んでいなくても、アプリを作ることを可能にしていました。そしてクラウドはデータセンター構築の心配なく独自システムの構築をスタートできます。
当時作っていたホームページ等と同じように、オープンソースソフトウェアとクラウドでの開発を学び続ければ、求めているアプリが作れるという未来が見えました。
ITサポートの延長でオープンソースを活用してちょっとした便利アプリの提供からスタートし、2016年にはAWS、2017年にはGoogle Cloud及びAlibaba Cloudの認定パートナーを取得しました。
初めて海外進出(インド・ベトナム)と撤退から学んだこと
2018年、インド・ベトナムにオフショア開発会社を設立し、ホテル・旅館向けの総合管理クラウドアプリの開発プロジェクトを開始。2019年にプロジェクト中止、オフショア撤退。言語の壁や、”あたりまえ”の違い、日常生活感覚の重要さを学びました。
ソフトウェア開発は人数を増やせば良いわけでなく、開発者一人ひとりの感覚やイメージが大切であることがわかりました。ソフトウェアイノベーションの震源地である欧米ではすでに少数精鋭のチームが新しい技術で大きな革命を起こしており、その革命的なアプリがある環境はまた、そのほかのイノベーションを加速させていました。
新しい技術が生まれる環境に身を置くことには非常に価値があるということがわかりました。
チーム規模の縮小、反省と再起の過程でアプリケーションフレームワークを開発
規模は縮小したもの少数精鋭のチームを再編成し、この反省を活かすべく体制を整えました。日本人の得意な「暗黙の了解」を開発フローに適用するのではなく、ソフトウェアフレームワークとして落とし込みました。
小規模のチーム編成でもアプリの開発とそのサービスの公開が問題なく行えるように考案されたオープンソースのアプリケーションフレームワーク「SOULs」を開発し、実際に小規模のチームでも米国政府関連日本機関のクラウドアプリ開発・運用等を行うことができるようになりました。
高速で安価なSolanaブロックチェーンとの出会い
2020年、アメリカ・カリフォルニア滞在中にSolanaブロックチェーンと出会いました。ブロックチェーンもオープンソースソフトウェアでアプリ開発に活用できます。
ブロックチェーンは特にコピーや改ざんすることが難しい性質から、お金のような価値を表すプログラムに向いています。bitcoinは最も有名な仮想通貨で、ブロックチェーン技術を活用して作られています。他にもそのコピーや改ざんすることが難しい性質を利用してデジタル証明のような技術も出ていました。
しかし、いざ使ってみるとネットワークが重く送金が完了するまで時間がかかり、起きていることがわかりづらく、心配が多いのでユーザー体験が悪いものが多かったです。また、手数料も安くありませんでした。
そんな中、Solanaは1秒以内に送金が完了します。まるで魔法のようでした。きっと高い手数料がかかるのかもしれない、そう思うのが普通ですが、それがどのチェーンよりも安い。手数料として数百円かかるのが普通だった中で、0.1円未満の手数料を実現していました。
ブロックチェーンアプリによるグローバル送金コストの「革命」と、大きな可能性
送金コストに革命が起きました。今まで、1秒以内に1円もかからず、グローバルに送金ができたことはありません。ご存知とは思いますが、海外送金のコストは非常に高いです。長い時間と大きな費用がかかります。これは実際にその分の人が関わり、相当の仕事量があるので仕方のないことですが、ブロックチェーンはプログラムなので、ここを大きく改善することができます。
仕事を考える上で、送金コストや手数料は常に重要な課題です。細かい仕事は大きな送金コストによって成り立たなくなります。今までの仕組みでは、送金コストや送金の仕組みの限界から、仕事の分割には限界がありました。
ブロックチェーンアプリを活用すれば、今までにない単位で仕事を分割、分散し、課題を解決することができ、今まで解決できなかった問題を解決できるようになります。
ブロックチェーンを活用した社会貢献事例
これを表す好例はTEKKONというSolanaブロックチェーン上のプロジェクトです。これは市民が協力し、電柱やマンホールの写真を撮って送ることで報酬のトークンが得られるというものです。老朽化とその管理コストが問題となっている電柱やマンホールのインフラですが、市民が分散して写真を撮ることにより、巡回の大きなコストを削減できます。削減できたコストの中から市民に報酬が生まれる仕組みです。このように仕事を分散することによって、今までにないエコな方法で社会問題を解決することが可能になりました。
グローバルなビジネス活動やコミュニティ形成にも役立ちます。ブロックチェーンを活用すれば世界中どこへでも一瞬で送金できるようになったため、プロジェクトのグローバル展開も効率良く行えるようになりました。例えばSuperteam Earnは仮想通貨支払いのクラウドソーシングプラットフォームで、主にブロックチェーンプロジェクトから世界各地での普及促進イベントの開催やプロダクトの改善に活用されています。
Epicsはソフトウェアのバグや脆弱性、改善点など一つ一つに懸賞トークンを用意することで、グローバルに協力を可能にして課題の早期解決を促進するプラットフォームです。広報やイベント開催のような技術者以外にも必要な役割へのインセンティブや、貢献度合いを分かりやすくするためにゲーミフィケーションを取り入れています。
誰でも参加・貢献でき、それに見合った報酬を得ることのできるあたらしい経済とグローバルな協力体制によって、常に深刻なリソース不足を抱えるソフトウェア開発の問題を解決していこうという取り組みです。
オープンソースソフトウェア開発の課題
同じ頃、オープンソースソフトウェア開発の課題についても気づき始めていました。便利だなと思って使っているオープンソースソフトウェアのメンテナンスがある日突然止まってしまう、ということがあまりにも多く起きていたからです。私たちだけが便利だなと思ったわけでなく、多くの支持を表す多くのGitHubスターを集めているプロダクトを選んでいても、メンテナンスが終わってしまうものが少なくありませんでした。メンテナンスが終わったソフトウェアは、セキュリティが担保されず、いつ壊れてしまってもおかしくない状況にあります。
創業当時は低かった企業のオープンソースソフトウェアコード率ですが、この頃になると9割ほどになりました。企業が共通の技術を利用すれば、人材流動性も上がり、業界全体で前に進むことができるため、オープンソースソフトウェアを活用した開発は主流となり、現在のAIやブロックチェーンなど、多くの革命を起こし続けています。
しかし、オープンソースソフトウェアの開発は未だにボランティアによるものが基本で、報酬はありません。全世界の97%のWebサイトから利用されている実績をもつ本当に役に立つソフトウェアを開発した結果、その開発者は日頃の時間をすべてそのプロジェクトのメンテナンスに当てることになっても、それに対しての報酬はありませんでした。それほどまでに有用なプロジェクトの開発者でも、プロジェクトの存続には自身の貯蓄に頼るより他無く、とても持続可能な環境にはなっていません。
実際にデータをみてみると、過去2年間にメンテナンスのなかったオープンソースソフトウェアコードがアプリに含まれている割合、そして、オープンソースコードベースに脆弱性が含まれる割合はともに8割を超えているという、世界的に危機的な状況を迎えています。目に見えづらいだけに厄介な問題です。
持続可能なソフトウェアイノベーションのためにブロックチェーンを活用するというビジョン
ソフトウェアを作るにもコストがかかりますが、メンテナンスにはまた別のコストがかかります。
自由で誰でも無料で使え、無限のリソースに見えるオープンソースソフトウェアも、裏で誰かの頑張りが支えており、現状はかなり無理をして今のイノベーション環境を支えている状態です。
私たちはオープンソースソフトウェア開発の強力さを知ってしまったので、今更昔ながらの閉鎖的な開発環境に戻ることはできません。しかし、この開発環境を持続可能なものにしなければ、ソフトウェア産業は一気に崩壊してしまう恐れがあります。
欧州ではオープンソースソフトウェア開発の社会的影響を調査するレポートが発表されており、そこではオープンソースプロジェクトへの投資はGDPへの費用対効果で1:10と大きな結果を出しています。
グローバルに利用できるオープンソースソフトウェアは社会資産として価値を発揮できます。投資・寄付対象としても社会的な貢献度が大きく、開発者としてもグローバルな価値を創造することに非常に興味があり、できることならオープンソースソフトウェアの開発を仕事にしたいエンジニアが大勢います。
ここに、ブロックチェーン技術によって可能になったトークンエコノミクスによるあたらしい経済を作り、オープンソースソフトウェア開発のリソース不足を解決し、世界中のソフトウェアの品質向上、イノベーションの促進に貢献していくというビジョンが生まれました。
開発環境と基盤の整ったオランダにてソフトウェア研究開発所を設立
それまで受けていた受託開発案件をすべて引き継ぎ、2020年秋にオランダ・アムステルダムにてソフトウェア研究開発所のエルソウルラボを創業しました。
当時はまだ日本では暗号資産の期末評価課税の問題があり、日本の企業でトークンを発行してDAOのような取り組みを行うことは現実的ではありませんでした。
そのため、海外に出る必要があったのですが、特にオランダに決めた理由は、ブロックチェーンビジネスが可能である法的な基盤と、IT先進国でスタートアップを応援しており、特にソフトウェア研究者を優遇していたからです。
少なくとも4年前からGoogle Mapでトラムやバス、地下鉄の現在地が表示されていたり、政府もIT活用が盛んで、すべてをデジタル化して生活環境を向上しようという取り組みがとても速い国です。IT先進国での生活によってプロダクトの水準を高めて、それを世界に広めることができます。
さらに、私たちもオランダ政府からWBSOという先端科学技術研究プロジェクトの認定を受けているのですが、これには援助金と税制優遇があり、私たちソフトウェア研究開発者に時間単位の補助金と、認定プロジェクトから上がる利益の9割が非課税になります。
このようにソフトウェア研究開発プロジェクト等、特に立ち上げが難しい部類のビジネスを応援する基盤が整っており、かつ英語も使うことができるので、私たちにとってオランダは最善な環境でした。
初のWeb3プロダクトリリースとSolana主催ハッカソンへの入賞
ブロックチェーン開発ならではの問題と格闘しながらひたすら開発を続ける毎日。世間はコロナでロックダウンしている中、私たちはひたすらコードを書き続けていました。そしてついに初のWeb3プロダクトをリリースできたのが、2022年の9月になります。
リリースしたEpics AlphaはWeb3分散型クラウドソーシングプラットフォームとして、オープンソースソフトウェアの抱える問題に懸賞金を賭けて、解決できる開発者を集めるプラットフォームで、スマートコントラクトとトークンが活用されています。
このプロダクトはSolana Summer Camp Hackathon 2022 に18,000を超える応募の中から5位に入賞することができました。
同じく10月にはこのEpicsプロジェクトがオランダ政府よりWBSO(先端科学技術研究開発)プロジェクトとして認定されました。
シードラウンド資金調達とIDO上場、そしてこれからの取り組みについて
Epics DAOは先日、シードラウンド資金調達に関してプレスリリースを出させていただきました。
Epics DAOのユーティリティトークン$EPCTは2023年1月にSolana上のDEX(分散型取引所)OrcaにIDO上場しました。
Epics Betaはブロックチェーンゲームとして生まれ変わり、オープンソースソフトウェア開発の問題を実際に解決できる開発者・投資家・広報活動家のそれぞれが楽しさとインセンティブを求め、それにより実際に行動することで社会問題が解決されていくという好循環を生み出します。
2023年12月シーズン開始予定のEpics Betaウェイトリストには50,000人を超えるプレイヤーが集まっています。現在EpicsコアチームはWeb3モバイルフォン”Solana Saga”のSolana Mobileチームと共同でSolana Mobile Stackによる開発を進めております。
オープンソースソフトウェア開発は深刻なリソース不足を抱える一方で、開発者の強い憧れはオープンソースソフトウェア開発を生業としていくこととなっています。オープンソースは世界中の課題を解決することができるため、影響力・貢献度がとても大きいからです。
開発者は、グローバルに役に立つことのできるオープンソースソフトウェア開発に携わりたい強い欲望を持っています。しかし、実際問題それはハードなチャレンジで、リスクがかなり高いのが現状です。生活が犠牲になってしまう恐れがあります。
Epics DAO はあたらしい経済をつくることによって、この強いニーズを満たしていきたいです。
開発者の強い社会貢献に対する思いを現実にするため、社会貢献の価値をトークンとして表現し、奨励していくことでグローバルなイノベーションを持続可能なものにするプラットフォームを構築していきたいです。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
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Epicsは社会貢献型ブロックチェーンゲームで、深刻なリソース不足に陥っているオープンソース開発をトークンエコノミクスとゲーミフィケーションにより活性化させ、ソフトウェアによるイノベーションを持続可能なものにします。
公式Webサイト:
Epics ホワイトペーパー:
https://storage.googleapis.com/epics-bucket/WhitePaper/EpicsWhitePaperV3-0-1JA.pdf
Epics DAO Discord コミュニティ: