プレスリリース
創業60周年。感謝と挑戦を胸に、持続可能な街づくりへの取り組み。スマートシティ開発を海外でも。インドネシアにおける職住近接の街づくりの取り組みB
“住まいの器”だけでなく“住まい手の心豊かな暮らし”を商品開発で実現する、という創業当時の松下幸之助社主の家づくりに対する想いは、そのまま街づくりにも引き継がれました。そこに暮らす人たちの健康、快適・利便性、豊かなコミュニティを実現し、その街で生活することの誇りであるシビックプライドを醸成するトータルな提案は、現在の街づくりにおいてさらに磨き上げられています。
「街づくり」編全5回のうち3回目は、インドネシアで推進中のスマートシティづくりへの挑戦を取り上げます。
世界最大級の総合都市インフラ開発プロジェクト
インドネシアの首都・ジャカルタから南東へ37qの副都心、デルタマス・シティで現在、日系としては世界最大級の総合都市インフラ開発プロジェクトが進んでいます。開発エリアの総面積は山手線内側の半分の広さに相当する3,200ha。うち、1,000haを住宅、商業施設、行政機関、教育機関を備えた都市エリアとして、2,200haを工業団地エリアとして開発し、約10年後には就業者数約10万人、夜間人口5万人の創出を目指しています。
デルタマス・シティは、双日株式会社と現地財閥 グループとの合弁会社、プラデルタ レスタリ社(PDL社)が1996年から手がけてきた都市開発プロジェクト。PDL社の副社長を務める上原 敦さんは「当初は住宅・商業エリアとして整備する予定でしたが、インドネシアへの日系企業の進出が盛んになってきたことを受け、途中から用地の3分の2を工業団地に用途変更し、職住近接の街づくりを目指し開発をしています」と経緯について語ります。
PDL社副社長の上原 敦さん
すでに工業団地エリアは8割が売却を終えており、日系の自動車メーカーや食品メーカーのほかデータセンターなど約170社が進出しています。近接地には高速道路のインターチェンジがあり、日本の新幹線に当たる高速鉄道も開通し、来年には新駅も開業予定など、交通インフラの整備で利便性がさらに向上しています。
親日国であるインドネシアに照準を定める
その住宅エリアの一角で、パナソニック ホームズが双日グループとともに、日本で培った街づくりのノウハウを生かしたスマートタウン「SAVASA(サバサ)」の整備に着手したのは2016年のこと。2030年頃には2000戸強、1万人弱が暮らす街の整備に向け、持続可能な暮らしとコミュニティの実現を見据えた、パナソニック ホームズとしては初となる海外における街づくりの挑戦が始まりました。
1963年の創業以来、「強さ」と「暮らしやすさ」を備えた住まいづくりで実績を重ねてきたパナソニック ホームズが、「日本品質の住まい」を世界の人たちにも、と考えるのは自然の流れでした。2010年、初の海外進出となる台湾における内装事業に続き、2012年に進出したマレーシアでは、海外事業としては初となる戸建て住宅の建設請負にも事業を広げました。
次なるチャレンジとしてパナソニック ホームズが照準を定めたのは街づくりでした。2014年には、神奈川県藤沢市で、環境負荷低減や健康度の向上を図るため、街づくり組織が住民と関わりながら街を持続的にアップデートしていく仕組みが導入された「Fujisawa SST(サステナブル・スマートタウン)」が街びらきをしたことを受け、その海外版を手がけたいという機運が高まっていました。
当時、海外市場のマーケティング調査を担ったのが、海外事業部に所属していた新田 篤です。開発候補地として挙がったのはインドネシア、タイ、ベトナムの3か国。4カ月間に及ぶ調査を経て最適地としてインドネシアを選択しました。「インドネシアは、総人口約2.7億人とASEAN加盟国の中で最多の人口を誇り、順調な経済発展に伴い、中間・富裕層の占める割合も年々増加しています。また、年間の新設住宅着工戸数は日本の約2倍程度と推定され、慢性的な住宅不足が指摘されています。そうしたマクロの状況と合わせて考慮に入れたのがパナソニックブランドの浸透度です。インドネシアには早くからパナソニックの電化製品が普及し、ブランドへの好感度が高いことも決め手になりました」。
スマートシティへの取り組みを表彰されたトロフィーを前に語る新田 篤
2016年7月には、パナソニックグループと50年以上の取引で信頼関係を築いてきた現地の会社と合弁会社、現パナソニック ホームズ ゴーベル インドネシア社(PHGI社、当時 パナホーム ゴーベル インドネシア社)を設立。並行して開発案件の調査を進め、ちょうど住宅エリアの開発が始まろうとしていたデルタマス・シティのプロジェクトに参画することを決めました。PHGI社の社長を務める田中 一彦は「日系会社であることの安心感も大きかったですし、何より工場団地が整備された職住近接のプロジェクトであること、また県庁をはじめとする行政機関、日本人学校、商業施設をはじめとする都市インフラの整備も計画され、将来の発展性が見込めたことからその可能性にかけることにしました」と語ります。
そして2017年10月には、PHGI社と双日グループによる合弁による分譲住宅共同事業会社、パナホーム デルタマス インドネシア社(PHDI社)を設立。「SAVASA」と命名されたスマートタウンを目指した開発がスタートしました。PHDI社の取締役も務める上原さんは「開発用地には日系のクリニック、日本人学校、日本人向けのサービスアパートメントを整備し、日本食レストランも10軒以上進出するなど、日本を打ち出すことで街の価値を高めています。そこへパナソニック ホームズに参画をいただくことで街の価値がさらに上がると考えました」と、今回の協業に至った経緯を語ります。
SAVASA分譲地入口前にて上原 敦さん(左)と 田中 一彦(右)
街づくりで掲げた4つのスマートコンセプト
街づくりにあたっては4つのスマートコンセプトを掲げました。「スマートタウンシップ」では、自然のエネルギーを最大限活用するパッシブデザインを採用し、風の通り道を考慮した設計によるエアコン負荷の抑制、共用部の樹木や植物の水やりへの雨水の再利用、共用部における太陽光発電システムやLED街路灯の設置などを行っています。「スマートセキュリティ」では、住民が安心して暮らせるよう、CCTVネットワークなど、街全体のセキュリティを高めるとともに各住戸にホームセキュリティシステムを採用しています。「スマートホーム」では、独自の壁式プレキャストコンクリート工法と、風の通り道や屋根断熱、独自の換気システムを導入することで高い耐震性、健康で快適な住空間を実現。また、「スマートコミュニティ」では、店舗やコインランドリーなどの住民専用施設のほか街区内に共同農場を設け、住民同士のコミュニティ形成を促進し、相互見守りによる安全性の向上を図っています。
参考:関連プレスリリース
SAVASA完成パース図
なかでもインドネシアの地域特性に合わせ、注力したのが住まいの空気質の向上です。インドネシアでは、野焼きやそれによって引き起こされる森林火災による煙害(ヘイズ)が深刻化しています。ヘイズに含まれる汚染物質には塵、一酸化炭素、メタン、窒素酸化物、硫黄化合物などがあり、目の炎症、喉の痛み、咳、肌のむず痒さなどの健康被害を引き起こしていることから、国としてもその解決が喫緊の課題となっています。
住まいの空気質にこだわってきたパナソニック ホームズのノウハウを生かし、健康的な室内環境を保つために、換気システム「ピュアテック」を採用し、外気導入時には空気中に含まれるPM10.0を97%取り除くフィルターを介して室内に取り込みます。さらに、建物内に風の通り道を設けて換気を促しながら、室内の空気を清浄に保っています。
また、パナソニック製の空調と換気を連動させた空調システムを市場にいち早く導入するなど、空気質に重きをおいた住まいづくりを進めています。
参考:関連プレスリリース
展示コーナーに設置されたパナソニックの空調システム(the Complete Air Management System)
東南アジア最大級のイオンモール出店も追い風に
SAVASA第1期は2018年10月から販売を開始し、空気質の向上にこだわった住まいやセキュリティにも配慮したまちづくりが高い評価につながり、好調な滑り出しとなりました。しかし、2020年初頭から新型コロナウイルス感染症が拡大したことにより営業活動が全くできない状態となりましたが、コロナ禍が収束段階に入った2023年に入って復調し、同年9月には過去最高の受注量となりました。その理由について田中は「ヘイズが年々悪化し、子どもさんのためにも清浄な空気環境を確保したいというニーズが高まっていることが挙げられます。購入されたお客様からは、換気システムが住宅購入の決め手の一つになったとの声もいただきました。また、デルタマス・シティ内にイオンモールのショッピングモールが2024年3月に開業することも追い風になっています」。
その「イオンモール デルタマス」は、インドネシアのイオンモールとしては5カ所目で、同国内および東南アジア全体でもイオンモールとしては最大規模を誇り、大きな関心を集めています。今後は室内の空気質向上をさらに進めるとともに、インドネシアではまだ一般化していない住まいのアフターメンテナンス体制も整備することで、住まいだけでなく街並みの管理を行い、SAVASAの価値を高めていこうとしています。
SAVASA分譲地(手前)の向かいに、開発が進むAEONモール(奥)
住民が主体的にイベント開催を提案
SAVASAには現在までに約200戸の住宅が建っていますが、昨年、田中、新田にとってうれしい話が飛び込んできました。住民から、インドネシアの独立記念日である8月17日に合わせて、SAVASAの住民たちでイベントを企画したいというリクエストがあったのです。新田らはイベントの実現のために奔走しました。当日は、SAVASA内の広場で運動会を開催し、住民たちはパン食い競争などを楽しんだそうです。「住民の方々が自発的にイベントを企画してくださったことは、わたしたちが考えていたコミュニティの形成を先取りするもので、街づくりの理念と合致するものです。当日、住民の方たちが心底楽しんでおられる姿を見て感動しました」と新田は言います。
今年中にはそこに新たに100戸分が加わります。「原野の状態からここまで開発が進んだこと思うと日本では味わえない街づくりの醍醐味を感じますが、住民の方々は一刻も早く街のにぎわいを感じたいと考えているはずです。そのためにも販売を増やしていくことが最大のテーマです」と田中の言葉に力が入ります。
田中 一彦
現地イベントの様子
海外デベロッパー事業の成功モデルを目指して
現地での販売推進を担っている1人が、2022年4月、パナソニック ホームズの海外事業部からPHGI社にトレーニーとして出向し、SAVASAプロジェクトに参画している近藤 麻衣です。赴任後はSAVASAプロジェクトのWebの改修も手がけたことで集客効率が高まり、受注にもつながっているとのこと。一方で現地従業員の教育については苦労もあるようです。「インドネシア人は言いたいこと、考えていることをあまり表に出さない気質があります。話していることの意図を汲み取りながらコミュニケーションを密にしています。また、会社のためにというよりも自分のためにという意識が強いので、営業のモチベーションを上げる工夫も取り入れながら営業力向上に向けた施策に取り組んでいるところです」。
現地社員とのコミュニケーションを積極的に図る近藤 麻衣(右から二番目)
トレーニーとしての任期は2024年3月まで。「インドネシア人は購買にあたってさまざまな案件を比較検討するというよりも、人気だから、売れているから買うという考えをされる方が多いので、イオンモールなどの整備で追い風が吹いている状況をしっかりと捉え、実績を積み上げていきたいと考えています。そして、SAVASAで海外デベロッパー事業の成功モデルをつくりさらに新たな海外プロジェクトを進める後押しにつなげていきたい」と意気込んでいます。
”持続可能な街づくり” 第1号
”持続可能な街づくり” 第2号
次号は、街の将来のビジョンを示すバックグラウンドストーリーをもとに住民が主体になって育てる街をご紹介します。(11月17日公開予定)
◎パナソニック ホームズ株式会社について
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