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地球環境、漁業者、畜産業者それぞれの課題を解決する鍵は「カギケノリ」だった。海藻で環境問題に立ち向かう「The Blue COWbon Project」発足の裏側

(PR TIMES STORY) 2023年07月11日(火)17時02分配信 PR TIMES

パス株式会社の連結子会社である株式会社アルヌールは、2020年11月の設立以来、自社のR&Dセンターにおいて藻類の培養技術を培ってきました。


微細藻類や海藻の有用性はあまり知られていませんが、実は「ブルーカーボン」と呼ばれる大気中の二酸化炭素を吸収する役割を持つほか、牛のゲップに含まれて大気中に排出されるメタンガス対策にも効果を発揮するなど、地球に優しいものとして近年注目を集めています。メタンガスは温室効果ガスとして知られており、その温室効果は二酸化炭素の約25倍にもなります。


このたび、アルヌールは鹿児島県の山川町漁業協同組合と共同で、海藻である「カギケノリ」によるブルーカーボン及び牛のゲップ由来メタンガスの削減に向け、新たに環境プロジェクト「The Blue COWbon Project」を立ち上げました。まず、山川町で「カギケノリ」の海上養殖と屋内養殖の技術開発を行い、牛の飼料としての商品化も目指しています。



海藻と、牛と、地球温暖化。一見つながりがなさそうにも思えるものを結びつけた本プロジェクト立ち上げの経緯を振り返ります。

「カギケノリ」がメタンガス抑制の鍵に?

我々は微細藻類を培養しており、その培養後に出る残渣を何かに使えないか?ともともと考えていました。情報収集をする中で目に止まったのが、「カギケノリ」という大型藻類です。海藻、その中でも特にカギケノリが牛のげっぷなどで排出されるメタンガスの削減に関与しているという論文が多数見つかったのです。


海外でもカギケノリの研究や関連ビジネスが増えており、畜産が盛んなオーストラリアでは、カギケノリを牛の飼料に約0.2%混ぜて与えることで、牛の消化過程で発生するメタンガスを最大98%減少させることが確認されています。


漁師さんがアップしていたカギケノリの動画を発見

「まずは実物を見ないと始まらない!」と、カギケノリに関する情報を集める中で、YouTubeで環境問題について熱心に発信されていた鹿児島県の山川町漁業協同組合の漁師である川畑さん(鹿児島の環境活動家ともちゃん)が海中のカギケノリを映した動画を見つけました。カギケノリは日本を含む太平洋熱帯海域に生息しており、鹿児島近隣の海域でも天然のものが多く生息しているとのこと。



鹿児島の環境活動家ともちゃん

https://www.youtube.com/@kagoshimakankyou


動画を見つけてすぐに川畑さんご本人に連絡を取り、オンラインでお話を伺いました。漁師さんという職業の方とお話しするのは初めての事で緊張しましたが、屋外で繋いでくださった川畑さんの背景には青空と海と山が広がっていて「これこそが豊かさだな」と感動したことを覚えています。そこから川畑さんとのやり取りが始まりました。海について何も知識のなかった私たちに、漁業や養殖についてひとつひとつ教えてくださり、私たちのプロジェクトの構想にもすぐに賛同してくださいました。実際のカギケノリの生息エリアでの観察や採取などを一手に引き受けてくだり、このプロジェクトになくてはならない存在になりました。

漁業、畜産業、そして地球温暖化。それぞれの課題解決へ

「カギケノリ」は牛のゲップに含まれるメタンガスの抑制につながるだけでなく、漁業者にとっても助けのひとつになるのではないかと期待しています。海底の藻類が大幅に減少する「磯焼け」は漁師さんたちにとって深刻な問題で、2018年には鹿児島県阿久根市で海水温の上昇からウニが大量発生。これにより磯焼けが起きて藻類が減り、藻類を餌とするプランクトンが減り、そのため漁獲量が減ってしまったのです。カギケノリの養殖が進めば、藻場の回復拡大とそれによる安定した漁獲量も期待できます。また、海中の藻類が増えることで、大気中のより多くの二酸化炭素が「ブルーカーボン」として海洋生態系に隔離され、貯留されます。


そして、地球温暖化の大きな原因のひとつと考えられている「牛のゲップ」。牛のゲップやおならに含まれるメタンガスは、CO2に比べて25倍もの温室効果を持つとされています。牛による温室効果ガスの排出量は、もし「牛」を一つの「国」として仮定した場合、中国、アメリカに次いで世界第3位の温室効果ガス排出国になる程で、決して馬鹿にできない量になります。



畜産業者にとっても、牛のメタンガス問題はネックとなりつつあります。環境問題への意識の高まりからオーガニックやヴィーガン食を選ぶ人が増えれば増えるほど、牛のメタンガス問題や飼料用穀物の栽培による環境破壊に注目が集まっていき、牛を悪者のように捉えたりするようになるでしょう。実際に去年、畜産大国であるニュージーランドで、牛などの家畜のゲップや尿によって温室効果ガスを排出する農家に直接課税するという非常にセンセーショナルな計画が発表されました。


そういった世界の意識の流れや、実際に起こっている環境問題に配慮しながら、その産業に携わっている人にとっても良い、環境にとっても良い、全方位にとって良い仕組みを作れないかと試行錯誤を始めました。

鹿児島県山川町を訪れ、プロジェクト立ち上げへ

山川町漁業協同組合の川畑さんと連絡を取り合ってからすぐ、我々はプロジェクトチーム全員で実際に山川町の海を訪れました。


山川漁港


山川漁協の組合長をはじめとする皆さまに、私たちのビジョンや目的をお伝えしてご賛同をいただき、晴れて共同でのプロジェクトが発足したのです。



そこからいよいよプロジェクトが本格始動しました。カギケノリが海の中で十分に大きくなるのを待って実際の群生エリアに川畑さんに船で連れて行っていただき、実際に潜って実物のカギケノリを観察したり自分たちの手で採取したりするところから始まりました。海の中でゆらゆら揺れるカギケノリは本当に美しくフサフサとしていて、感動したのを覚えています。


天然カギケノリ(山川漁港近辺にて撮影)


現在、研究施設にお願いして、鹿児島の海で採取したカギケノリを試験管内で牛の胃液と混ぜて、カギケノリを混ぜていないものと比較してどれだけメタンガスの産生が抑制されているかの実験を行っています。

カギケノリの安定確保のため、養殖にトライ

海の中ではフサフサと大きく見えるカギケノリも、乾燥させると非常に少量になります。牛の飼料に安定的に混ぜて与えていくことを考えると、天然のものだけでまかなおうとすると乱獲にもつながりかねないため養殖が必須です。また、養殖を拡大していくことで藻場の回復にも大きな期待が持てます。


ただ、カギケノリの養殖は技術的にとても難しく、国内には詳しい専門家も多くありません。また、実際に海で養殖するには「区画漁業権」というものが必要ですが、新規で取得するのはかなりハードルが高い。そこで、技術面・権利面で川畑さんをはじめとする山川町漁業協同組合の皆さんの力を借り、海上養殖と屋内養殖の技術開発を共同で行ってまいります。また、鹿児島県は肉用牛の飼養頭数が日本2位の県でもあり、その飼養頭数は350,000頭を超えるため、畜産の現場での実証にもうってつけの場所でした。

5年以内の飼料化を目指して

プロジェクトは始まったばかりですが、海藻を用いた牛の飼料を5年以内に商品化することを目指しています。今日本では海外からカギケノリの粉末を取り寄せる流れもありますが、国産のカギケノリを日本の牛たちに安価に安全に安心して食べてもらえるように、各分野の方々とタッグを組んで、みんなの知識と経験と知恵を集結して、この構想を実現化していきたいです。


■The Blue COWbon Project   https://bluecowbon.com/


■山川町漁業協同組合について http://jf-yamagawa.jp/

組合名:山川町漁業協同組合

住所:鹿児島県指宿市山川福元6717

漁業協同組合紹介:かつおの水揚げ、かつお節生産、

いぶすき 菜の花カンパチ、繁殖保護事業、山川湾養殖漁場


■株式会社アルヌールについて https://www.alnur.jp/

会社名:株式会社アルヌール

本社:東京都渋谷区神宮前六丁目17番11号 JPR原宿ビル

R&Dセンター:東京都豊島区高田一丁目25番3号 

代表者:代表取締役 星 淳行

創立:2020年11月

資本金:3000万円

事業概要:微細藻類の培養装置及びそのオペレーションノウハウを基幹技術とした、バイオメディカル・ヘルスケア分野及びCO2削減等環境分野における研究・開発及びその技術提供、関連商品販売

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