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グローバル刃物メーカー貝印のこだわりを凝縮した『関孫六』 新製品『要』の開発までに込められた“ものづくり”に対する思いとは The Story of 要(かなめ)ーーー関孫六 マスターライン 第三章

(PR TIMES STORY) 2023年01月27日(金)11時30分配信 PR TIMES


国内家庭用包丁シェアNo.1ブランド※『関孫六』からこの秋、新たに発表された『関孫六 要』。その誕生にまつわるストーリーを、製品が完成するまでの期間と、完成後の様子を4つのフェーズに分け、各々について、このプロジェクトに深く関わってきた、商品企画部、デザイン部、開発部の各担当が時系列で語ります。


貝印の“ものづくり”に携わる各々の存在と役割、製品ができるまでには、どんなストーリーや苦労、想いがあったのでしょうか?

※自社調べ

  調査期間:2021年1月-2021年12月まで  国内家庭用包丁売上金額において


「関孫六 要」リリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000394.000025105.html


語っていただくのは、『要』の“要”とも言える、この三方。



第三章 ――― 到達点至高の逸品

試作・試験を経て(2021年6月2022年2月)


―――今回もどうぞよろしくお願いいたします。第二章では、『関孫六 要』の姿かたちを決定づける作業である、デザイン・仕様のフェーズについて語っていただきました。本章でプロジェクトはいよいよ、試作・試験のフェーズへと進むのですが、そこで迎えた“正念場”で、まさかの選手交代があったわけですね。採用が決まっていた鋼材が変更された背景には、一体何があったのでしょうか?そこにはどんな理由があったのでしょうか?


百瀬

そもそも、鋼材は包丁において切れ味を左右する重要な要素の一つです。鋼材は硬度が高い方が切れ味を良くしますが、硬いだけでは折れてしまうので靭性(ねばり強さ)も同時に求められます。この硬度と靭性は、鋼材の組成からある程度決まってきますので、鋼材選定は非常に重要になります。変更の背景には、コンプライアンスを重視する社会的な流れと、グローバル展開するうえで販売国の法規制に準拠するという社内的な方針がありました。世界の法規制において、例えばEUでは食材接触部位(刃体と口金)に対して、特定の物質がどれだけ溶け出すかを確認する「溶出試験」の実施が必要になります。そのため、鋼材に含まれる、人体に影響を及ぼす有害物質に対しての基準値が厳格でありそれをクリアできる鋼材の選定が必要になりました。


―――日常使いのなかで、包丁の鋼材から有害物質が溶け出すなんてことは考えにくいことですが、厳しい基準があるからこそ、大きな安心感を得られるというものかもしれませんね。


百瀬

そのタイミングで、性能的にも検討していた鋼材に劣らず溶出試験をクリアできる鋼材が見つかりました。貝印としては初めての採用で実績もありませんでしたが、“安全”を意識しているところは大きなアピールポイントなので、今の時代の潮流にも合致していると感じました。そこで、商品企画部側にも相談し、「ぜひやりたい!」ということで採用が決まったんです。



丸山

現在の「関孫六」の売上の中心は日本国内にあります。でも、会社の今後の方向性としては、よりグローバルな展開も検討しています。先ほどの通り『関孫六 要』は、販売予定国にヨーロッパも含めているので、現地の法規制を考慮するとハードルを下げてくれると考えたんです。それが“決め手”になりました。急遽、鋼材変更したことで試作の期間も含めて、当初の予定が大きくずれ込みました。結果、『関孫六 要』は、2022年6月の発売予定を11月まで伸ばしました。


―――発売予定を半年近く延期してでも、この鋼材変更はいい結果をもたらすと考えたわけですね。こうして貝印として初採用の鋼材を芯材とした三層構造が採用された『関孫六 要』ですが、試作づくりはどのような流れで進められたのでしょうか?


百瀬

第二章のデザインのフェーズと多少重なる期間もありますが、設計して、図面を描いて、DR(デザインレビュー)という流れで34ヶ月かかったのちに、9月に試作品ができました。


―――DR(デザインレビュー)とはなんでしょうか?


百瀬

DR(デザインレビュー)とは、新しい製品の企画段階から量産開始に至るまでの期間に関係部署が一堂に会し、仕様や設計について認識をすり合わせる場です。全部で4つのフェーズがあるのですが、それぞれ、企画案の承認→設計の承認→試作品の承認→量産試作品の承認といった流れで進みます。


―――なるほど。量産にむけての検証の場なのですね。


百瀬

私たち開発部門にとっては“つっこみ”を入れてもらう場です(笑)。


―――そうなんですね(笑)。ちなみに、『関孫六 要』の試作において、苦労されたことはありましたか?


百瀬

設計面ではそんなにハードル高くなかったかもしれません。でも、製造面でハードルが高いところが2つありました。


ひとつは、この“刃文”ですね。『関孫六』ブランドの『青藤』や『桃山』のように、小さな波の集まりで"アイキャッチ"にしているシリーズもあるのですが、ここまでダイナミックなものは初めての経験でした。もちろん、従来の方法ではできなかったので、とても苦労しました。


※上から「関孫六青藤三徳165mm」「関孫六 桃山 三徳165mm」


―――確かに。この刃文は、まさに日本刀のそれのようですが、どのようにつくられているのでしょうか?


百瀬

詳しい製法はお話しできないのですが、大塚のデザインやイメージをきちんと再現できる設計になっています。



―――デザイン的にはイメージ通りに再現されていますか?


大塚

100%イメージ通り、というわけではありませんが、“意図”はきちんと再現されています。この紋様は、私が表現したかった初代孫六兼元の“三本杉”の刃文がベースにあります。初代の刃文は、比較的ランダムになっていて、その様子を表現したいと考えていました。デザインのごく初期の段階から、その意図を開発と共有しながら、3DのCADシミュレーションを行い、再現性についての検証を重ねました。


―――プロダクトとして、意図通りにデザインが再現されることは大切なことですよね。


百瀬

そうですね。そして、もうひとつの苦労した点は柄(ハンドル)です。大塚からのデザインを設計に反映するのは問題なかったのですが、難しいのは実加工です。現在、手作業で研磨しているのですが、形状によって難易度が変わってくるんです。八角柄を研磨する弊社他製品もありますが、この柄(ハンドル)の研磨でいちばん難しいのは“角”で、それぞれの面がビシッと出ないとみっともないので、とにかく、きっちりと直線を出すことに苦労しました。


―――この工程では何人くらいの職人?の方が携わっているのですか?


百瀬

試作段階では一人ですが、量産段階では複数人になります。ですから、この八角形のハンドルを誰がつくっても、きっちり同じように再現できるかどうか、少し不安がありました。でも、量産時にはだれでも生産できるよう、体制を整えています。


―――なるほど。この部分は、人の手が加わっているのがよくわかるというか、“ハンドメイド”な感じが強いですね。この素材はなんというものですか?


百瀬

“積層強化木”という集成材になります。薄い板を何層にも重ねているので、硬く、強度があり、天然の木材よりも比較的水に強い素材※です。他の包丁でも使っている素材なんですが、もともと黒く着色されたものです。


※膨張や変形の原因になるので食洗機や高温環境下では使用できません。


―――このハンドルは一般的なものよりも形状が複雑なので、仕上げるのにけっこう時間がかかるのではないでしょうか?


百瀬

はい。通常のハンドルよりも1.5倍くらい時間をかけて仕上げています。


―――かけていますね。それでは、試験についてお聞きしたいと思います。今回、急遽鋼材変更を行ったわけですが、初めての鋼材ということでどのような苦労がありましたか?



百瀬

新鋼材のため耐食性や硬度の確認について念入りにチェックしました。事前に鋼材メーカーから素材の特性についての情報をいただいていたのですが、再現性を確認するためにも、社内で鋼材の特性をしっかり試験しました。熱処理の条件などで変わってくる数値もあるので…。あとは、もちろん切れ味ですね。


―――鋼材を変えたことによって、よかったポイントはありましたか?


百瀬

企画や開発でも確認しましたが、今までの『関孫六』とは違う切れ味になったと評価しています。そこには、鋼材だけではなく、『関孫六 要』ならではの独特な刃体の形状も功を奏していると思います。切れ味は、刃体の研削の仕方でも変わりますが、刃先を薄めに仕上げたことで“切り込み”がよくなりました。これは、『旬』ブランドがヒントになっています。


―――耐久性はどうでしたか?


百瀬

耐久試験機を使って、摩耗具合や切れ味をチェックしましたが、結果はよかったです。また、自社開発の切断試験機でもいい結果が出ました。『関孫六』ブランドの中では最高峰と言ってもいいと思います。


―――たとえば、どんなものを切ればいいですか?


百瀬

薄刃で切り込みがいいので、白菜なんかがわかりやすいですね。あと、キャベツの千切りなんかもどんどんトライしていただきたいです!


―――随所にこだわりの詰まった『関孫六 要』は、見応えのある逸品。眺めていても楽しいのですが、そこはやはり“道具”。早く、実際に使ってみたいです!11月にはいよいよ公式発表される『関孫六 要』。イベントでの反応も気になりますね。その模様はまた後日くわしくレポートさせていただきたいと思います。


次回へ続く

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