プレスリリース
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栄養失調のため入院し治療を受けている赤ちゃん(ナイジェリア・カツィナ州)=2024年10月29日 (C) Abba Adamu Musa/MSF
ナイジェリア北西部において子どもの栄養失調が極めて深刻な水準にあることが、国境なき医師団(MSF)と地域保健当局との調査を通じて明らかになった。気候、インフレ、治安の悪化が主な原因で栄養失調児が毎年増加しており、2025年には壊滅的なレベルに達すると懸念される。MSFはナイジェリア政府や援助機関に対し、緊急に支援を拡充するよう求めている。
栄養失調の子どもが毎年増加
この調査は、MSFの疫学関連の研究所であるエピセンターとカツィナ州保健省との協力により、7月にカツィナ州内の3つの地域で2000人超の子どもを対象に行われた。
生後6カ月から5歳までの子どもの急性栄養失調率を推定するため、2022年以降、毎年同じ時期に、同じ地域で、同じ方法で調査を実施している。上腕中央部の太さ、両側のむくみ、標準身長・体重からの離れ具合をみるZスコアの3つの方法を組み合わせて栄養状態を評価する。
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栄養状態の測定を受ける子ども=2024年10月29日 (C) Abba Adamu Musa/MSF
MSF米国の事務局長、アブリル・ブノワはこう述べる。
「栄養失調の患者数は年々増加の一途をたどっており、2025年には壊滅的な打撃を受けると予測しています。食料難と栄養失調という大きな危機が発生しているのです。MSFはナイジェリア政府や国際援助団体に、支援を強化するよう呼びかけています」
3割超の子どもが栄養失調
調査地の一部では全急性栄養失調の子どもが30%を超え、2年前の22%から上昇している。また、栄養失調のなかでも最も危険な重度急性栄養失調の割合は、6.8〜14.4%に達している。これは、「総合的食料安全保障レベル分類」によれば、栄養失調の極めて危機的なレベルだ。さらにMSFは、調査実施後、栄養失調の子どもがさらに増加していることを確認している。
MSFの医療コーディネーター、ラファエル・カナンガ医師は「率直に、恐ろしい調査結果です。ここ数年、数値は上昇を続けており、現在は『危機的なレベル』から『極めて危機的なレベル』へと移行しつつあります。このような状況で援助を減らしたら、記録的な数の子どもが命を落とすことになります」と危機感を見せる。
インフレに治安悪化、気候変動が重なり
MSFはカツィナ州で栄養失調の子どものための治療センターを4カ所運営する。今年1月から現在までに10万人以上の栄養失調児を治療したが、前年同期比で20%の増加となった。今年の入院患者数は、過去2年と比較すると50%以上増加した。重症のため救えなかった子どももおり、2024年1月から9月までの間に800人以上の子どもがカツィナ州の施設で亡くなった。
これはナイジェリア北部の栄養施設全てに見られる傾向だ。今年初めにMSFはナイジェリア北西部ザムファラ州の複数の地域で集団検診を実施した結果、27%の子どもが全急性栄養失調に陥っていることが明らかになった。ナイジェリア北部7州で活動しているMSFの医療チーム全体では、今年1月から9月までに29万4000人の子どもに栄養治療を行った。前年同期比で43%増に当たる。
食料難が今後さらに悪化するという予測も大きな懸念材料だ。現在のナイジェリアはインフレ率が非常に高く、自国通貨の切り下げも続き、農産物の収量は今年も大幅に減少している。生活費は上昇し、複数の地域では依然として治安の悪化が懸念され、家畜や農作物に影響を与える気候変動は今後も続くと予想されている。上記の要素を総合すると、追加の支援なしには2025年はさらに多くの命が失われかねないとMSFは懸念している。
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外来栄養治療センターで子どもの治療を待つ女性たち=2024年10月29日 (C) Abba Adamu Musa/MSF
資金援助の増強が求められる
全急性栄養失調の子どもの割合が大幅に増加しているにもかかわらず、北西部地域はナイジェリアの国連人道対応計画にまだ含まれていない。
世界的な援助資金削減により、援助機関による栄養失調児への対応は減っている。栄養治療食の世界規模の不足も昨年来の課題となっているほか、現在も悪化し続けている。ザムファラなど一部の地域では、3月以降、限られた物資しか供給されていない。ユニセフは最近、世界12カ国で200万人近い子どもがこうした物資不足のために死の危険にさらされていると懸念し、世界的なアピールを開始した。
ナイジェリアでMSFの代表を務めるシンバ・ティリマ医師はこう語る。
「MSFは、ナイジェリア北部で深刻化する栄養失調の危機について、警鐘を発し続けてきました。今回の調査結果は最も恐れていたことを裏付けています。事態は改善したのではなく、著しく悪化しているのです。
今年は、ケビ、ザムファラ、カツィナ、マイドゥグリなどの各地で、緊急治療を必要とする栄養失調の子どもがかつてないほど多くいます。私たちは追加のテントや予備のマットレスなどあらゆる物を使って、病院に詰めかけた患者になんとか対応しています。
大規模な対策を今すぐ行わなくては、来年の状況は劇的に悪化する恐れがあります。私たちは、ナイジェリアの連邦保健社会福祉省による栄養失調対策を評価しています。全ての関係者が資金援助を増やし、栄養治療食を確実に供給できるようにすれば、来年は多くの子どもの命を救える望みがまだあるのです」
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栄養失調で入院している子どもに寄り添う母親=2024年10月30 日 (C) Abba Adamu Musa/MSF
<ナイジェリアにおけるMSFの栄養失調対応>
同国内7州(ボルノ、バウチ、カツィナ、カノ、ソコト、ザムファラ、ケビ)で栄養プロジェクトを運営。マイドゥグリやカツィナ市などでの10カ所の入院施設のほか、30カ所超ある外来栄養治療センターで入院の必要のない中等度や重度栄養失調の子どもを治療している。
プレスリリース提供:PR TIMES