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学校法人 順天堂

アルツハイマー病のワクチン療法副作用の原因を解明

(PR TIMES) 2016年10月05日(水)12時43分配信 PR TIMES

〜老人斑の除去が毒性オリゴマーの増加に〜

 順天堂大学大学院医学研究科・認知症診断・予防・治療学講座の田平 武客員教授、神経学講座の服部信孝教授ら、および佐賀大学などの共同研究グループは、新たに開発したアルツハイマー病*1の飲むワクチンが脳炎や消化器症状などの副作用を示さないことをサルで確認しました。同時に、老人斑が消失する反面、毒性物質オリゴマー*2が増加することを発見しました。この成果は、これまでのアルツハイマー病のワクチン療法の治験がうまくいかなかった理由の裏付けとなり、ワクチンの副作用を減らした新たな治療法の開発に繋がります。本研究は米国の学術雑誌「Journal of Alzheimer’s Disease」のオンライン版(日本時間:2016年9月27日)で公開されました。
【本研究成果のポイント】
・アルツハイマー病の飲むワクチンの安全性をサルで確認
・ワクチンで老人斑アミロイドが消失する反面、オリゴマーの増加を発見
・飲むワクチンとオリゴマー除去抗体を併用した新しい治療法へ

【背景】
 アルツハイマー病は高齢者に多い認知症を起こす脳の病気で、アミロイドが原因であると言われています。アルツハイマー病のワクチン療法*3は、副作用である自己免疫性脳炎が起こったため治験が中止になりました。このとき、ワクチンの免疫反応により老人斑アミロイド*4を除去することには成功しましたが、臨床的有効性は確認できず、神経細胞死はむしろ増加していました。これを受けて抗体療法の第III相試験が実施され、やはり老人斑アミロイドの除去には成功しましたが、有効性は認められませんでした。そこで、私たちの研究グループは効率の良い腸管免疫のアプローチに着目し、脳炎を起こさない飲むワクチンの開発を試みました。この飲むワクチンによる効果がマウスで認められたため、ヒトに応用する前にサルで安全性と有効性を確認する研究を行いました。


【内容】
 まず、この飲むワクチンを老齢サルに投与し、安全性を確認する実験を行いました。その結果、従来のワクチン療法で見られた副作用の脳炎や消化器症状などは起こらず、この点での安全性は確認されました。次に有効性を調べるために脳の病理変化を調べました。その結果、老人斑が減少していることを確認しました(図1左)。さらに、生化学的に調べると、脳の可溶性のアミロイドが増加していることが新たに分かりました。そこで、脳の抽出液を電気泳動により詳しく調べたところ、毒性を有するオリゴマーが増加していることを発見しました(図1右)。
[画像1: http://prtimes.jp/i/21495/3/resize/d21495-3-210874-0.jpg ]



 以上の結果から、ワクチンにより老人斑アミロイドが融解することで、老人斑は消失しましたが、その反面で毒性のあるオリゴマーが増加したものと考えられます(図2)。これが、これまでのワクチン療法、抗体療法の治験がうまくいかなかった理由と考えられました。
[画像2: http://prtimes.jp/i/21495/3/resize/d21495-3-737467-1.jpg ]



【今後の展開】
 今まで、アルツハイマー病に対するワクチン療法では老人斑はよく消えるのに臨床的有効性が見られないどころか、神経細胞死がむしろ増加しているという問題がありました。本研究で明らかになった飲むワクチンによるオリゴマーの増加を示す結果は、その現象の裏付けとなり、新たな治療法の開発に繋がります。
 アルツハイマー病の原因となる老人斑は人により個人差がありますが、概ね50歳代から出現します。つまり、老人斑のできる前(50歳頃)にワクチンを投与すれば、有毒なオリゴマーを増やすことなくアルツハイマー病の発症を遅らせることができると考えられます。また、老人斑出現後にワクチンを投与する場合にはオリゴマー除去の抗体による後療法との組み合わせが有用と考えられます。これはアルツハイマー病のワクチンの副作用を防ぐ新しい考え方であり、この組み合わせについて、私たちの研究グループが作成したオリゴマー除去抗体と合わせて特許出願しました。
 今後は、飲むワクチンとオリゴマー抗体による後療法を組み合わせることで、実際にオリゴマーの増加を伴うことなく老人斑が減少することを確認し、安全性と有効性を精査した後に、ヒトでの治験を行う予定です。


【用語解説】
*1:アルツハイマー病
高齢者の認知症で最も多く、現在我が国には400万人位の患者がいると推定されています。脳にアミロイドが蓄積し老人斑を形成するのが特徴です。

*2:毒性物質オリゴマー:
アミロイドβタンパクは小さなペプチドで脳に溶けた状態で存在し、それ自体毒性はありません。しかしそれが脳で過剰になると塊りを作ります。小さな塊りであるオリゴマーは毒性があり神経細胞を傷つけ細胞死を引き起こします。これがアルツハイマー病の原因であると考えられています。

*3:ワクチン療法
私たちの免疫系は非自己を認識しこれを除去する機能があります。ウイルスや細菌は非自己であるため、これが感染すると免疫系が非自己であると認識し除去します。アミロイドβタンパクの塊りは非自己とみなされ免疫系により除去できることがわかり、アルツハイマー病のワクチン療法の可能性が出てきました。

*4:老人斑アミロイド
老人斑に蓄積しているアミロイドはアミロイドβタンパクが凝集して線維状になったものです。


英文タイトル:
An Oral Aβ Vaccine Using a Recombinant Adeno-Associated Virus Vector in Aged Monkeys: Reduction in Plaque Amyloid and Increase in Aβ Oligomers

著者:
Hideo Hara, Fumiko Ono, Shinichiro Nakamura,Shin-ei Matsumoto, Haifeng Jin,
Nobutaka Hattori and Takeshi Tabira

論文リンク先:
Journal of Alzheimer’s Disease (http://www.j-alz.com/) に掲載

DOI: 10.3233/JAD-160514

共同研究先:
国立長寿医療センター、佐賀大学、国立基盤研究所霊長類医科学研究センター、滋賀医科大学

研究助成先:
本研究は、国立医薬基盤研究所(MF-3)、厚生労働科学研究費[経口ワクチン(Aβ発現アデノ随伴ウイルス)の老齢ザルに対する治療効果の検討]、エーザイ(株)、ヤンセンファーマ(株)、日本メジフィジックス(株)の研究助成を受け実施されました。

特許情報(日本特許): 特願2016-093868 提出日:平成28年5月9日

発明の名称: アミロイドβ蛋白質オリゴマー用モノクローナル抗体及びその利用

発明者: 田平 武、松本信英、服部信孝、福原武志、原英夫

特許権者: 学校法人順天堂



プレスリリース提供:PR TIMES

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