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【中部大学】マイクロ波利用でCO2 を吸収させた路盤材の短時間・大量合成技術を開発--化学産業の電化とカーボンニュートラルの促進に期待--

(Digital PR Platform) 2024年11月26日(火)20時05分配信 Digital PR Platform



マイクロ波の産業利用研究を長年進めてきた中部大学工学部の樫村京一郎准教授(人間力創成教育院 情報教育プログラム兼務)と宮田健史研究員らは、中国電力株式会社、中国高圧コンクリート工業株式会社(広島市、吉岡一郎社長)と共同で、マイクロ波加熱を利用してコンクリート廃材と石炭火力発電所から排出される飛灰にCO2ガスを吸収させて焼結し、路盤材に利用できるクリンカ(注3)を短時間で大量に合成することに成功した。




1.研究成果のポイント
■マイクロ波(注1)の利用で、コンクリート廃材と飛灰(ひばい)(注2)にCO2ガスを吸収させた路盤材を製造。
■製造した材料は最大10%の炭素を貯蔵することを確認。
■大量の飛灰を、迅速に高温まで加熱・焼結できるマイクロ波加熱炉を建造。
■熱伝導の低い材料に合わせた、マイクロ波加熱炉の設計法を開発。



2.発表概要
一般家庭では、天然ガスや石油などの化石燃料に代えて、電気で暖房器具や風呂、食べ物を加熱する電化が進んでいる。さらに自宅のソーラーパネルで発電した電気を使うことで、火力発電所から送られてくる電気の使用量を減らすことができるようになった。
このような家庭の電化は、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)排出を抑えることにつながっている。ところが大量の化石燃料を使う化学や鉄鋼産業での電化はまだ不十分な現状がある。化学や鉄鋼産業で製品を効率的に加熱する手段として、電子レンジの原理であるマイクロ波の利用が有望と考えられる。マイクロ波によってこれまでより大量の製品をより短時間で加熱できたり、従来は製造が難しかった新しい製品を作ることができたりすれば、産業界の電化が進み、カーボンニュートラルに大きく貢献すると期待される。

マイクロ波の産業利用研究を長年進めてきた中部大学工学部の樫村京一郎准教授(人間力創成教育院 情報教育プログラム兼務)と宮田健史研究員らは、中国電力株式会社、中国高圧コンクリート工業株式会社(広島市、吉岡一郎社長)と共同で、マイクロ波加熱を利用してコンクリート廃材と石炭火力発電所から排出される飛灰にCO2ガスを吸収させて焼結し、路盤材に利用できるクリンカ(注3)を短時間で大量に合成することに成功した。飛灰やコンクリート廃材がCO2 を吸収する現象はこれまでに確認されていた。しかし飛灰の熱伝導率(注4)が極めて低いためCO2を十分に吸収するための化石燃料による加熱時間が長くなり、エネルギーを大量に消費することが実用化の課題だった。

今回、マイクロ波によって加熱時間を大幅に短縮でき、実用化のめどが立った。数値計算を利用して、熱伝導の悪い飛灰を高効率で大量に均質加熱できる加熱炉を開発し、1時間当たり40〜80kgの飛灰を加熱、CO2を吸収させたままで焼結できることを確認した。新しいマイクロ波加熱炉設計法の有効性が実証されたことで、今後材料に合わせた高効率なマイクロ波加熱炉が実用化されることが期待できる。

この成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の委託業務(PJ コード: P16002)の結果で得られた。詳しい研究内容は化学工学の専門誌Chemical Engineering Journal(電子版)に掲載された。



3.論文の情報
雑誌名: Chemical Engineering Journal
論文タイトル:Production of carbon storage sintered body from fly ash by microwave heating
著者: Keiichiro Kashimura, Takeshi Miyata, Satoru Segawa, Souma Yamamoto, Kouhei Kurooka, Keita Kagawa, Kenji Nakamoto
DOI:10.1016/j.cej.2024.157683
URL:https://doi.org/10.1016/j.cej.2024.157683



4.用語解説
(注1) マイクロ波
周波数300MHz(波長1m)〜300GHz(波長1mm)の電磁波の総称。食品を加熱する電子レンジ、電波として携帯電話や衛星放送(BS)・衛星通信(CS)などに利用されている。電子レンジには周波数2.45GHz(122mm)のマイクロ波が使われ、食品に含まれる水の分子を振動させて内部から加熱する。

(注2)飛灰(ひばい)
石炭やゴミなどを燃やした際の排ガスに含まれる灰や煤(すす)などの固形物を「飛灰」と言う。石炭の燃えカスで焼却炉内に残る「石炭灰」と区別されるが、飛灰の英語名であるフライアッシュは、石炭灰の約9割を占める。

(注3)クリンカ
焼却炉内などの壁面に融着した石炭灰で、鉱物質が半溶融状態で焼き固まった塊。粉砕してセメントの原料である粘土の代替材として利用されている。中国電力では、火力発電で発生する石炭灰の98%以上をセメント原料や土地造成材、土木材料用のクリンカを再生して有効活用している。

(注4)熱伝導率
物質中の熱の伝わりやすさを表す値で単位はW/(m・K)。熱は温度が高いところから低いところへと移る特徴があり、値が大きいほど熱が伝わりやすく放熱性が高い。逆に値が小さいほど熱が伝わりにくく断熱性が高い。熱伝導率は物質の種類や密度、測定する温度などの条件によって単純比較できないが、例えば公表されている常温での値は、ダイヤモンドが1000〜2000、銅が400、石英ガラスが1.5、コンクリートが1、水が0.6、ナイロンが0.3 で、灰が0.03。これらの値から、灰は極めて加熱しにくいことがわかる。

5.お問い合わせ先
【研究内容について】
樫村京一郎 中部大学 工学部 准教授
電子メール kashimura@isc.chubu.ac.jp
電話 0568-51-8420
【報道担当】
中部大学 学園広報部 広報課
電子メール cuinfo@office.chubu.ac.jp
電話 0568-51-7638



▼本件に関する問い合わせ先
中部大学 学園広報部広報課
TEL:0568-51-7638
メール:cuinfo@office.chubu.ac.jp


【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/

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