プレスリリース
【弘前大学】天候を感知し養殖用機械を遠隔操作できる自然エネルギー利用システムを開発 -- 青森県鰺ヶ沢町のアユ養殖場で実証実験に成功
弘前大学(青森県弘前市)大学院理工学研究科の丹波澄雄准教授、東北大学マイクロシステム融合研究開発センターの古屋泰文学術研究員(前特任教授)らは、北日本地域の養殖業において自然エネルギーを利用した「グリーンテック自立型IoTスマート養殖システム」(GEMCOS-IoTシステム)を開発。青森県の鰺ヶ沢町にあるアユ養殖場で、システムの実証試験に成功した。このシステムは、小型風車とソーラーパネルから得られた電力で養殖場内のセンサーを作動させ、気象状況や装置の異常などを監視し、遠隔操作することが可能なもの。研究の成果は、農水産業における生産性向上や地方経済・住民生活の質の向上に貢献することが期待される。
ここ数年にわたる新型コロナウイルス禍や国際情勢悪化によってエネルギーや食料の安全保障(注1)が求められ、グリーンテック産業(注2)の拡大が必要とされている。特に北日本地域では、海水温上昇や異常気象などの環境変化により、魚介類の収穫量確保に苦戦している。
弘前大学大学院理工学研究科の丹波澄雄准教授、東北大学マイクロシステム融合研究開発センターの古屋泰文学術研究員(前特任教授)らは、アジア太平洋地域最大級の独立系再生可能エネルギー発電事業者(IPP)であるヴィーナ・エナジーのグループ会社となる日本風力エネルギー株式会社(東京都港区、ニティン・アプテ代表取締役)、株式会社多摩川ホールディングス(東京都港区、桝沢徹代表取締役)、アウラグリーンエナジー株式会社(青森県青森市、川越幸夫代表取締役)と共同で、自然エネルギーを活用しWi-Fiにつながらない山間地でも遠隔操作可能な養殖システム「グリーンテック自立型IoTスマート養殖システム」(GEMCOS-IoTシステム)を開発し、青森県鰺ヶ沢町にあるアユ養殖場で実証試験に成功した。
研究グループは3台の小型風車と2個のソーラーパネルから得られる電力により、養殖場に設置したセンサーを作動させ、その周囲の気象状況や装置の異常など環境パラメーター10種類の変化を常時クラウド上で監視することに成功。さらに、養殖場に置かれた給餌装置と大型LED照明を約30km離れた弘前市内のスマホ画面から操作できることを確認した。
このシステムは、農水産業における生産性向上、地方経済や住民生活の質の向上に寄与することが期待される。
この研究の成果は、2023年2月21日(火)に弘前大学で行われた情報処理学会東北支部研究会において「白神非Wi‐Fi地域でのLoRa通信を用いた自立型グリーンIoT養殖システム」と題して発表された。
(注1)エネルギー・食料安全保障
国民の生活や社会経済の運用に不可欠なエネルギーと食料の入手可能性とその方法に関する国家レベルの施策。持続的な成長を可能とするために、危機に強いエネルギー供給体制を構築して、「食料安全保障」を政策に取り入れること。以下の政府報告書(閣議決定:2022/10/28)に、「エネルギー・食料等への危機に強い経済構造への転換」との記述がある。
〔参考 URL〕
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai8/siryou5.pdf
(注2)グリーンテック
環境保護の観点から持続可能な社会を実現するために、再生可能な資源やサービスを活用する技術・事業を指す。これは、化学やテクノロジーを活用して再生可能なサービスや事業を創出することを目的としている。工業製品生産プロセスにとどまらず、農業食料生産、それらの省力化・自動配送や安全な管理システムまでも含む、脱炭素化イノベ―ションが期待できる。グリーンテック市場は、世界的な SDGs社会への流れに乗り、地球の生産限界を超える方策として発展が予測されており、IT(ICT)の次の投資分野としても高い期待が寄せられている。
▼本件に関する問い合わせ先
弘前大学大学院理工学研究科
丹波 澄雄准教授
住所:青森県弘前市文京町3番地
TEL:0172-39-3725
メール:tanba@hirosaki-u.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/