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高砂熱学工業株式会社

粘着テープ・印刷工場等を対象とした「クローズドVOC回収システム」を実証

(@Press) 2021年06月04日(金)11時00分配信 @Press

高砂熱学工業株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長COO:小島 和人/以下「当社」)は、粘着テープ工場や印刷工場などで使用されるトルエンや酢酸エチルなどの揮発性有機化合物(VOC)を含む排気ガスを、吸着処理したのち製造工程に循環再利用する「クローズドVOC回収システム(以下、本システム)」を開発し、粘着テープメーカーの株式会社寺岡製作所(本社:東京都品川区、代表取締役社長:辻 賢一、以下「寺岡製作所」)の茨城工場(所在地:茨城県北茨城市)で実証運転を行いました。この度、従来設備に比べてVOC大気放出量を95%・CO2排出量を78%削減する成果等を確認しましたので、お知らせいたします。


<経緯>
粘着テープ工場や印刷工場の製造工程には、粘着剤をフィルム・紙等に塗布し乾燥させ、不要な溶剤を蒸発させるドライヤ(溶剤乾燥炉)があります。そこで排出されるVOCは、光化学スモッグの原因になるなど、呼吸器系や粘膜に健康被害を与えることが知られています。2018年度における日本国内のVOC総排出量は約64万トン、粘着テープ工場や印刷工場においては約5万トンにのぼります(※1)。
従来のVOC処理方法であるワンパスシステム(図1、左)は、ドライヤから排出されたVOCを含む排ガスを、燃焼(※2)、または吸着回収(※3)することで処理するものです。法令には遵守しているものの、VOCを完全に処理できるわけではなく、一定濃度(数十〜数百ppm)で常に大気放出されています。さらに燃焼方式の場合、大量のCO2が発生するため、脱炭素社会実現の観点からもVOCの非燃焼処理が望まれています。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/261711/LL_img_261711_1.png
図1 従来VOC処理システムと本システムの比較

<本システムについて>
本システム(図1、右)は、ドライヤから排出されたVOCを含む排ガスを、吸着ロータで浄化したあとに、ドライヤの給気として循環再利用するシステムです。主要機器は、吸着ロータ(吸着剤に不燃材のゼオライト採用)、ブラインチラー、冷却塔、コンプレッサなどで構成され、以下の特長があります。

(1)ドライヤの排気を給気として循環再利用(クローズド化)することにより、VOCの大気放出量を大幅に削減
(2)非燃焼方式のため、VOC燃焼処理によるCO2排出量を削減
(3)従来の吸着回収方式では水蒸気の使用に伴う排水処理が必要であったが、本システムは循環系内の水分のみが回収されるため、排水削減(排水レス)・排水処理コスト減
(4)クローズド化することにより、特に冬期においてドライヤの給気に必要な加熱エネルギーを削減(省エネ)


<粘着テープ工場では国内初となるクローズドシステムの実証運転を実施>
昨年3月、寺岡製作所の茨城工場に本システムを設置し、処理ガス量:5,000Nm3/h、処理ガス濃度:2,900ppm、処理ガス温度:70℃の設計条件にて、同6月から、12時間連続運転などの実証運転を同社と共同で実施しました(図2)。稼働中の施設でクローズド化したシステムを実証することは、国内初の取り組みです。

画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/261711/LL_img_261711_2.jpg
図2 寺岡製作所での本システム外観

昨年12月までの約半年間における実証運転を通じて、同社製品の品質、製造環境の安定性、回収溶剤の性状、VOC排出量の削減効果、CO2の排出量削減効果などを評価した結果、以下の成果を確認しています。

(1)ワンパスシステムと比べ、VOC大気放出量を95%削減(図3)
(2)燃焼方式ワンパスシステムと比べ、CO2排出量を78%削減(図4)
(3)製品品質は、ワンパスシステムと同等の品質
(4)製造環境は、ワンパスシステムでは外気をドライヤに給気するため湿度変化があったのに対し、クローズド化により低湿度の安定した製造環境を維持
(5)回収した溶剤もトルエン純度99.9%以上と高品質な状態で回収

画像3: https://www.atpress.ne.jp/releases/261711/LL_img_261711_3.png
図3 VOC大気放出量

画像4: https://www.atpress.ne.jp/releases/261711/LL_img_261711_4.png
図4 CO2排出量

<第48回「環境賞」にて「優秀賞」を受賞>
本取り組みは、第48回「環境賞」(主催:国立環境研究所・日刊工業新聞社、後援:環境省)※4にて、寺岡製作所と共同で「優秀賞」を受賞しました。環境保全・環境の質向上へ貢献する技術として評価されました。


<今後の展開について>
当社では、今後も同社茨城工場にて年間稼働データを取得し、本システムの省エネルギー性、冬期・夏期の製造環境の安定性について引き続き確認を行うとともに、回収溶剤の純度に応じた再利用方法の検討、さらには年間稼働データに基づく経済性の精査に着手していく予定です。
同時に、溶剤回収や、再利用が期待できる印刷・粘着テープなどの単一成分の溶剤を使用した製造工程に対して、エンジニアリング事業部を営業窓口に、2025年度までに10件の導入を目指しています。これによるVOC削減量は約500トン/年、CO2削減量は約3万トン/年を見込んでいます。


※1 出典:環境省「揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリ報告書(令和2年3月)」より
https://www.env.go.jp/air/osen/voc/inventory.html
※2 燃焼方式
排気ガスを燃やすことで、VOC中の炭素を酸化分解して処理する方法。
※3 吸着回収方式
排気ガス中のVOCを吸着剤(活性炭等)に吸着させて、VOCを回収する方法。
※4 環境賞
1974年に創設され、環境保全や環境の質の向上への貢献が認められる技術開発・調査研究・実績活動などを表彰する制度です。環境分野における歴史と信頼を兼ね備えた賞として、社会から評価されています。賞は、「環境大臣賞」「優秀賞」「優良賞」「審査委員会特別賞」の4種類です。


【高砂熱学工業について】 https://www.tte-net.com
1923年創業以来、空調設備工事の設計・施工を中心に、人にやさしい快適空間の創出、高品質プロダクツ製造環境の構築、AIを活用した設備の最適な運転や省エネのコンサルティングなど、建物ライフサイクル全般にわたってのトータルなサービスを日本全域・中国・東南アジア・インド・メキシコで展開。当社グループは心地よい環境を創造する「環境クリエイター」として、脱炭素・サステナブル社会の実現に寄与する技術・商品・サービスの創出に取り組んでいます。


【寺岡製作所について】 https://www.teraokatape.co.jp/
粘着テープの総合メーカーとして1921年創業以来、常に業界をリードする、独創的かつ高度な技術を駆使し、電機・電子用テープ、梱包・包装用テープ、産業用テープなどあらゆる産業で活躍する粘着テープを製造。近年はエレクトロニクス産業関連の製品開発に取り組み、高機能テープを世に送り出しており、すそ野の広い産業に多彩な提案を行なうことにより事業領域の幅を広げてきています。なお、茨城工場では、スマートフォンやパソコン等の家電機器に使用される電気絶縁用の「ポリエステルフィルムテープ」や、養生用の「P-カットテープ」などを生産しています。

プレスリリース提供元:@Press

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