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プレスリリース

公益財団法人笹川平和財団

ツバルにおけるサンゴ礁劣化の歴史に関する科学論文がScientific Reports誌に掲載

(@Press) 2020年06月01日(月)15時30分配信 @Press

2020年4月30日、笹川平和財団海洋政策研究所(以下、海洋政策研究所)(東京都港区 所長:角南 篤)に所属する中村 修子研究員(プロジェクト当時:東京大学大学院理学系研究科特任研究員)と東京大学大学院理学系研究科の茅根 創教授のグループによる科学論文Nakamura et al.(2020) Anthropogenic Anoxic History of the Tuvalu Atoll Recorded as Annual Black Bands in Coralが、Scientific Reports誌(nature research journal)に掲載されました。


本論文の研究は、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の「海面上昇に対するツバル国の生態工学的維持(2008-2013)」においてツバル国で行われたサンゴ年輪ボーリング調査研究に、中村研究員が参加し、サンゴ骨格年輪を用いてツバル環礁のサンゴ礁生態系劣化の歴史を復元することに成功した研究成果を発表するものです。論文は、2019年度海洋政策特別研究として、ツバル環礁を対象に実施された「『SIDS 環境変動モニタリング・調査研究の協働体制構築』に向けた研究」の一環として発表されました。


研究成果のポイント:
(1) どのような成果を出したのか
ツバルの首都フナフチ環礁で2009年に採取したサンゴ年輪には、黒色バンドが見られました。黒色物は、硫化鉄がサンゴ骨格の炭酸塩結晶中に沈殿しており、海底堆積物に見られる黒色還元層と同様の成因であることが分かりました。年輪の黒色バンドは、嫌気性バクテリアによる硫酸還元(無酸素状態:Anoxic)が1990年代から季節的に発生しており、サンゴが斃死して藻場に変わってしまう生態系の劣化を記録していました。

(2) 新規性
過去の水質記録がないツバルで、サンゴ骨格年輪の同位体や放射光実験による重金属/有機物分析、微生物DNA解析、とくに鉄の酸化還元指標から、強還元(無酸素)環境とその年代を特定することに成功しました。

(3) 社会的意義/将来の展望
海面上昇によって水没の危機にある標高2-3mのツバル環礁において、島を形成・維持するために必要不可欠なサンゴ礁が、1990年代から人為的な富栄養化によって劣化していることを示しました。気候変動への回復力(レジリエンス)を高めるために、サンゴ礁生態系回復の大切さを示す政策エビデンスとしても活用を期待できます。


研究課題と成果詳細および将来の展望:
以下、UTokyo FOCUS Article紹介より抜粋 (掲載日:2020年5月25日)
<成果>
2009年、中村研究員と茅根 創教授のグループは、ツバルの首都フォンガファレ島で採取したサンゴ年輪の最上部に、黒色バンドが見られることを発見しました。黒色物は、硫化鉄がサンゴ骨格の炭酸塩結晶中に沈殿しており、海底堆積物に見られる黒色還元層と同様の成因であることが分かりました。年輪の黒色バンドは、嫌気性バクテリアによる硫酸還元(無酸素状態:Anoxic)が1990年代から季節的に発生しており、サンゴが斃死して藻場に変わってしまう生態系の劣化を記録していました。

<これまでの課題>
地球温暖化・海面上昇の危機に直面するツバル環礁は、人口増加による生活排水と廃棄物汚染の問題も深刻です。しかし水質の計測は行われておらず、サンゴ礁生態系への人為影響がいつから、どのように起きたのか不明でした。この解決に、長期ロガーとしてハマサンゴ骨格年輪のボーリング調査が行われました。

<成果の詳細>
13項目に及ぶ化学・生物分析により、黒色部からは鉄を主体とした重金属類、付着藻類など過剰な有機物および嫌気性バクテリアの遺伝子断片を検出しました。また黒色バンドに見られた赤褐色-灰青色-黒色の色グラデーションが鉄の酸化還元状態を反映し、黒色部が強還元(無酸素:Anoxic)環境で形成される硫化鉄を含むことを明らかにしました。これらの結果は、嫌気性バクテリアによる硫酸還元(無酸素状態:Anoxic)が1990年代から季節的に発生し、枝サンゴの斃死などサンゴ礁生態系の劣化につながったことを示しています。ラグーンでの重金属類や硫酸還元を招く富栄養化は、廃棄物や生活排水を起源とし、サンゴが人為影響を記録していました。
サンゴ年輪研究では初の重金属・有機・微生物DNA解析の手法を組み合わせ、詳細な環境復元に成功しました。とくに年輪内の鉄の酸化還元指標と微生物遺伝子解析は新しい環境指標としての可能性を広げます。

<成果の社会的意義、将来の展望>
島はサンゴの礫や有孔虫の堆積で形成され、健全なサンゴ礁が礫を定期的に供給すれば国土は維持されます。海面上昇に対する環礁島の本来のレジリエンス(復元力)を回復するために、サンゴ礁生態系の修復が必要です。ローカルな環境修復とグローバルな環境変化への適応が一致した政策や支援の策定がのぞまれます。

公表論文情報
著者名 :Nobuko Nakamura, Hajime Kayanne, Yoshio Takahashi, Michinari Sunamura, Go Hosoi & Hiroya Yamano
タイトル :Anthropogenic Anoxic History of the Tuvalu Atoll Recorded as Annual Black Bands in Coral
雑誌名 :Scientific Reports(nature research journal)
オンライン出版日:2020/04/30
DOI番号 :10.1038/s41598-020-63578-4
オンラインでアクセスできるURL: http://www.nature.com/articles/s41598-020-63578-4

関連記事のサイトURL
(1) Nakamura, N., BEHIND THE PAPER, Anthropogenic Anoxic Black Bands in Tuvalu Coral, Nature Ecology & Evolution Community (2020.5.1).
https://go.nature.com/3d3oAKj

(2) 東京大学、 ツバルのサンゴが記録していたサンゴ礁劣化の歴史 サンゴ骨格年輪に黒色バンドとして記録された無酸素環境 UTokyo FOCUS (2020.5.25).
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0508_00048.html

(3) 海洋政策研究所ブログ 海のジグソーピース No.179 <南太平洋ツバル 気候変動とサンゴ礁の危機> (2020.5.27).
https://blog.canpan.info/oprf/archive/1905

(4) 国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター<新着情報> (2020.5.25).
http://www.nies.go.jp/biology/index.html


<参考図表>
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/214369/LL_img_214369_1.jpg
ツバルのサンゴ年輪の黒色バンドと人為起源の季節性無酸素環境形成イメージ


(a) ツバルの首都フォンガファレ島のサンゴ年輪写真。放射性炭素(14C)による年代決定。1972-1991年に成長停止し、その後成長再開したが、黒色バンドの混入が見られた。
(b,c) 黒色バンド部分拡大。
(d) ハマサンゴ周辺の立ち枯れした枝サンゴ、付着藻類に覆われている。
(e) 月単位の酸素同位体比(δ18O)測定により年輪内に季節を導入し、黒色バンドの位置を重ねた結果、黒色部は11月から翌年3月頃にかけて、西風の雨季に混入することが分かった。
(f) 黒色バンドには赤褐色- 灰青色- 黒色のグラデーションがある。また黒色部は鉄を多く含み、色グラデーションは鉄の酸化還元状態を反映していた。黒色部には外部由来の有機物と嫌気性バクテリアの遺伝子断片も見られた。過剰有機物のバクテリア分解過程で硫酸還元まで進行し、無酸素環境下硫化鉄がサンゴ骨格に黒色バンドとして沈着する。

プレスリリース提供元:@Press

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