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株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

ロボットとの会話の難易度を定量化するための新たな脳解析手法を提案〜対話ロボットを用いて脳の活性化を目指す〜

(@Press) 2017年02月03日(金)16時00分配信 @Press

 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の山川 義徳プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、株式会社国際電気通信基礎技術研究所 石黒 浩特別研究所の石黒 浩、住岡 英信らのグループは、聞いている話の難しさを脳血流量から評価する新たな方法を提案しました。
 これまで、聞いている話が実際に脳が活性化するほどの難易度かを評価する方法については、ほとんど提案されてきませんでした。そこで本研究では、話を聞いている人の脳血流量から話の難易度を推定することに取り組みました。認知的な課題に対する脳血流量の反応特性に基づいた識別方法を提案したところ、既存の手法よりも高い精度で評価できることがわかりました。
 本研究成果はスイスのオンライン科学雑誌『Frontiers in Human Neuroscience』(2月3日付け)に掲載されました。


<ポイント>
・これまで、対話ロボット(注1)との会話が特に高齢者にもたらす効果は実証的に示されず、その際の話題の難易度を評価する方法についてもほとんど提案されていませんでした。
・本研究では話を聞いている人の脳血流量から話の難易度を評価することに取り組み、高い精度で脳血流量から話の難易度を評価できることがわかりました。
・今後は提案手法を広げていくことで、ロボットとの対話で脳の活性化を実現することが期待されます。


<研究の背景と経緯>
 ImPACT山川プログラム・マネージャーの研究開発プログラムでは、脳の健康に関するサイエンスとビジネスのインタラクションにより、世界に先駆けた新産業創出を目指しており、その一環として対話ロボットが人の脳におよぼす効果の検証と脳活動を利用して、対話ロボット(注1)を制御する方法を探索してきました。
 これまでの研究から、特に高齢者は人型の対話ロボットとの会話を好むことがわかっています(参考文献1)。近年の研究では、使われなくなった脳機能は低下しやすく、知的活動が機能維持につながることなどが報告されています(参考文献2)。しかし、会話の話題が高齢者の脳を十分に活性化させているかは不明であり、脳の健康に対してより効果的な会話を実現するために脳の活動状態の評価が必要でした。また実用化を考えた場合、それらをできるだけ簡易な装置、単純な方法で行えることが期待されます。


<研究の内容>
 本研究では、頭を使う話題を、聞いている人の脳血流量から難しい話題を聞いているかを評価することに取り組みました。近赤外線分光法装置(NIRS)(注2)で得られる脳血流量は、聞いている課題がその人にとって難しくなると次第に値が上昇することが知られています(参考文献3)。そのため、難しさの異なる話題を聞いている際の脳血流量データから、話題の難しさに応じた脳血流量の変化がはっきり識別されるようにデータ処理を行い、難しい話題を聞いているかどうかを評価できる方法を提案しました(参考図)。この方法は他の方法に比べ、計算量が少なく、設計者が設定すべきパラメータがほとんどない点も特徴です。
 実験では、対話に必要な認知機能であるワーキングメモリ(注3)に注目し、この能力を測る代表的な課題である、n-back課題を異なる難易度(1-back課題と2-back課題)(注4)で被験者に聞いて取り組んでもらいました。28名の1つのセンサからの脳血流量データを用いて複数の既存手法と性能比較を行った結果、提案手法は約75%の精度を示したのに対して他の手法は最高でも約67%であり、統計的にも提案手法は有意に優れた性能を示すことがわかりました。また、脳血流量の変化には性差があり、男女別に評価した方が80%を超える精度を示すこともわかりました(表1)。


<今後の展開>
今後は、提案手法を拡張し、人が実際にロボットから聞いている話を難しく考えているかどうかを評価することを目指します。それを用いることで対話ロボットが、ユーザーが難しいと感じている話題を選択することが可能となり、会話をすることで脳の健康を支援する対話ロボットが実現できる可能性があります。
また、話に対して脳が活性化していることは人の話を聞こうとしていることを反映している可能性があり、例えば講演が聴衆にどれだけ興味深く聴いてもらえたかを判定することに応用することで、日本人が苦手とするプレゼン能力を高める支援にも応用できると期待されています。


<本成果は、以下のプログラムによって得られました。>
・内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
http://www.jst.go.jp/impact/

プログラム・マネージャー:山川 義徳
研究開発プログラム   :脳情報の可視化と制御による
             活力溢れる生活の実現
研究開発課題      :対話健康支援ロボティクス
研究開発責任者     :住岡 英信
研究期間        :平成26年度〜平成30年度

本研究開発課題では、対話を通して、ユーザーのストレス軽減や意欲向上、認知機能維持・改善を実現する対話ロボットの開発を目標としています。


<参考図>
難しい話題を聞いているか評価するシステム 参考画像
https://www.atpress.ne.jp/releases/121243/img_121243_1.jpg

表1 提案手法と従来手法の平均予測精度の比較
https://www.atpress.ne.jp/releases/121243/img_121243_2.jpg


<用語解説>
(注1)対話ロボット
人と話をするロボット。本研究では特に人型のロボットを指します。

(注2)近赤外線分光法装置(NIRS)
光の変化量を測定し脳の活動を可視化する、非侵襲的検査法(放射線や薬品などを使わないため安全性の高い方法)。

(注3)ワーキングメモリ
会話や読み書き、暗算などを行う際、ある情報を一時的に心の中に保持しながら、同時に別の作業を行うこと。

(注4)n-back課題
順番に提示される刺激について、現在呈示されている刺激がn回前の刺激と同じかどうかを判定する課題。判定基準を何回前の刺激にするかで課題の難易度が調整できる。今回の実験では参加者に読み上げられた数字を聞きながら1回前の数字と同じか(1-back課題)と、2回前の数字と同じか(2-back課題)を判定してもらうことに取り組んでもらった。


<参考文献>
(1)Sumioka, H., Nishio, S., Minato, T., Yamazaki, R. & Ishiguro, H., “Minimal Human Design Approach for Sonzai-kan Media: Investigation of a Feeling of Human Presence”, Cognitive Computation, Volume 6, Issue 4, pp 760-774, 2014.
(2)Fratiglioni, L., Paillard-Borg, S., & Winblad, B., “An active and socially integrated lifestyle in late life may protect against dementia”, The Lancet Neurology, 3, pp.343-353, 2004.
(3)Fishburn, F.A., Norr, M.E., Medvedev, A.V. & Vaidya, C.J., “Sensitivity of fNIRS to cognitive state and load”, Frontiers in Human Neuroscience, Volume 8, Article 76, 2014.


<論文情報>
Soheil Keshmiri, Hidenobu Sumioka, Ryuji Yamazaki & Hiroshi Ishiguro:
A Nonparametric Approach to the Overall Estimate of Cognitive Load Using NIRS Time Series
(NIRS時系列データを用いた認知負荷推定のためのノンパラメトリックな方法)


<研究グループ>
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
石黒浩特別研究所
ソヘイル ケシュミリ、住岡 英信、山崎 竜二、石黒 浩 ※1
(※1大阪大学併任)
プレスリリース提供元:@Press

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