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一般社団法人こころの未来・インスティテュート

人工知能による自習型e-learning うつ治療の世界初の効果検証

(@Press) 2016年11月15日(火)15時00分配信 @Press

【ポイント】
〇認知行動療法による完全な自習型e-learningにおいて、人工知能の「自然言語処理」技術によって、入力された被験者の悩みを人工知能が理解して自動的に共感を示したり適切なアドバイスを行うことで、うつ症状の改善が増強されるかを検証した無作為統制試験を実施した
〇検証の結果、人工知能が脱落の有意な低下や将来の重症抑うつ者割合の減少効果を有する可能性が示唆された
〇同様の報告は諸外国では見当たらず、本日現在、本研究が世界初の「人工知能の自習型認知行動療法への応用に関する効果検証」であると考えられる


一般社団法人こころの未来・インスティテュート(所在地:東京都渋谷区)の代表 宗 未来は、慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室、独立行政法人経済産業研究所、統計数理研究所リスク解析戦略研究センターと共同で、人工知能(AI:Artificial Intelligence)で人のこころが癒せるのかについて検証。その結果、短期での抗うつ効果は示すことができませんでしたが、人工知能を付加することで、脱落率の有意な低下を認め、長期での重症抑うつ者割合を減らす可能性が示唆されました(高い脱落率や不十分な効果持続が従来の自習型e-learningの課題とされていました)。諸外国でこのようなメンタルヘルスにおける人工知能の自習型e-learningへの応用に関する効果検証の報告は認めておらず、本日現在、本研究が世界初の無作為統制試験による厳密な検証と考えられます。

本研究では、人工知能技術の一つで人が日常で使う微妙なニュアンスを含む自然な言葉遣いをコンピュータに理解させる「自然言語処理技術(NLP:Natural Language Processing)」を、完全自習型e-learningであるインターネット認知行動療法(iCBT:internet-based Cognitive Behavior Therapy)に応用。被験者が入力した悩みを人工知能が読み取り自動生成した言葉で共感の言葉を示したり、自習作業における適切なアドバイスを行ったりする「自然言語処理フィードバック機能搭載型インターネット認知行動療法」(iCBT-AI)を行った場合の、うつ症状軽減の増強効果について検証しました。

本研究で使用したiCBT-AIにはさらに技術の改善とその検証が必要ですが、今回の検証結果によりうつ病治療における新時代の幕開けを期待させる大きな一歩を示したといえます。


【研究の背景】
うつ病は、世界保健機関(WHO)により自殺危険因子でもある重大な障害として認知されています。その予備群である未病(軽症)うつまでを含めると、高額な社会的コストにつながることが示されています。そんなうつ病を改善するための取り組みとして、非適応的な考え方や行動習慣を修正する「認知行動療法」(CBT)が注目されています。しかし、セラピストの数が少なくコストもかかるため、十分には普及していません。

その対応策として、英国をはじめとする諸外国ではセラピストに頼る前にインターネットを活用した自習での認知行動療法(iCBT)が推奨されており、軽症うつ病治療の第一選択として公的医療制度においてもiCBTが導入されています。

しかし、iCBTには、短期的には抑うつ症状の改善するものの効果が持続しない、途中でやめてしまう脱落者が高い、あるいは患者の社会機能の改善にはつながらないといった課題が示されてもいます。また、専門家のサポートによる支援型iCBTは効果増強や脱落者減少が示されていますが、やはり人件費がかかりコストが高いことが問題となっています。軽症うつを呈する人々の潜在者数が極めて多いこと考えると、コストを下げるためには専門家による関与を最小限にとどめ、人件費を抑える工夫が必要となってきます。

そこで、こころの未来・インスティテュートの代表で精神科医の宗 未来は、専門家の代わりに人工知能をiCBTに応用しこれらの課題を解決できないだろうかと考え、その有効性を確認しようと本研究に着手しました。

本研究では、こころの未来・インスティテュート及び慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の宗 未来が統括、独立行政法人経済産業研究所の関沢 洋一が研究支援、統計数理研究所リスク解析戦略研究センターの竹林 由武が解析を担当しました。


【研究の概要】
近年、人工知能(AI)技術の一領域であり人が日常的に使っている自然な言葉遣い(自然言語)をコンピュータに理解させる「自然言語処理」(NLP)技術をiCBTに応用して、実施者によって入力された悩み等がコンピュータにより把握後、自動生成された共感の言葉が示されたり、自習作業に適切なアドバイスを行ったりするiCBT-AIが開発されています。本研究では、1)iCBT-AI群、2)AIを使用しない以外の機能はiCBT-AIと全く同じスペックを有する通常型iCBT群、3)待機群*の3群間で、どの群が最もうつ症状の軽減効果が大きいか等を無作為統制試験*で検証しました(図1)。主要評価指標としては、代表的なうつ評価指標であるPHQ-9*を用いました。

(図1)
https://www.atpress.ne.jp/releases/114153/img_114153_1.jpg

その結果、脱落についてはiCBT-AI群が、iCBT群に比べて優位に低いというデータを得ました (p<0.005)(図2)。全データでの結果では、通常のiCBT群では、待機群に比べて、介入期間終了直後(7週後)にうつ症状が改善する有意傾向が認められ(p=0.05)、3ヵ月後のフォローアップでは有意に低くなりましたが(p=0.01)、iCBT-AI群では有意な改善は認められませんでした。一方で、PHQ-9得点が10点以上の重症うつ者の場合は、介入期間終了直後には通常のiCBT群、iCBT-AI群ともに待機群に対して有意さは認められませんでした。しかし、3ヵ月後のフォローアップでは、iCBT-AI群のみにおいて約半減(改善)が有意傾向で認められました(オッズ比0.52;p=0.07)。特に、開始時における軽症うつ者に限っては(PHQ-9の2値アウトカム)、3ヵ月後フォローアップ時においてはiCBT-AI群だけが待機群に対して重症うつ者が約1/3(オッズ比*が0.35)と有意(p=0.02)に低い値が示されました(図3)。このことから、人工知能を用いたiCBT-AI群にだけ非人口知能型iCBT群や待機群では認められなかった軽症うつ者の将来のうつ状態の重症化を減少させる効果が有意に認められる可能性が示唆されました。

(図2)
https://www.atpress.ne.jp/releases/114153/img_114153_2.jpg
(図3)
https://www.atpress.ne.jp/releases/114153/img_114153_3.jpg


【研究の結論】
結論として、iCBT-AIは、AIを利用しない非AI型iCBTに比べて「脱落を有意に減らす」上、長期的には非AI型には認められない「将来の重症抑うつ者の割合の減少が期待される」ことが示唆されました。

私たちの知る限り、諸外国でこのようなメンタルヘルス領域における人工知能のiCBTへの応用に関する効果検証の報告は現状では認めておらず、本研究が世界初の検証結果であると考えられます。まだまだ、その一歩目を踏み出したばかりのiCBT-AIについては、今後のさらなる技術的な向上、およびその検証が望まれると考えられます。

なお、本研究の詳細については、独立行政法人経済産業研究所のホームページをご覧ください。
URL: http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/16j059.html


【用語の解説】
* 認知行動療法(CBT:Cognitive Behavior Therapy)とは、考え方や行動に働きかけてストレスの感じ方を軽減したり、メンタルヘルスにおけるうつ病等におけるつらい症状を改善させる精神療法(心理療法)の一種。認知とはものの受け取り方や考え方という意味

* 自然言語とは、人が日常生活のなかで意思疎通にふつうに使っている言葉遣いを含む言語体系

* 自然言語処理技術(NLP:Natural Language Processing)とは、人間が日常的に使っている自然言語をコンピュータに処理させる一連の技術

* 無作為統制試験とは、ある介入の有無をランダム(無作為)に振り分けて結果を判定することで、その効果検証を最も厳密にできるとされる医学的検証手法。

* 待機群とは、無作為統制試験期間中には、介入群との比較のために介入がなされずに待機するだけの群。試験終了後には遅れて介入が受けられることで、倫理的にも配慮されると考えられている

* 介入期間とは、介入を実施する期間

* PHQとは、Patient Health Questionnaireで、短時間で精神疾患を評価するための自己記入質問票。5点未満が「非うつ者」、5点以上で10点未満が「軽症うつ者」、10点以上を「重症うつ者」と規定されている。英国立医療技術評価機構(NICE)や米国精神医学会(APA)はうつ病の評価尺度として推奨している。

* オッズ比とは、ある疾患などへの罹りやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度。オッズ比が1より小さいと一方の群が疾患に罹りにくいことを意味する。

* アウトカムとは、結果、成果という意味。検査値の改善度や合併症の発生率、回復率や死亡率など、治療や予防による臨床上の成果を指す


【こころの未来・インスティテュートとは】
当法人は、精神医療の発展に寄与することを目的とし、精神医学領域における医科学的エビデンスの構築や再評価、精神医療領域における書籍及び、翻訳書の発行、職場のメンタルヘルスに対するコンサルタント業、セミナーの企画等の事業を行っています。

所在地:東京都渋谷区恵比寿1丁目7番4-802号
設立 :2015年10月
代表 :宗 未来


【宗 未来(そうみらい)略歴】
旭川医科大学医学部医学科卒。防衛医科大学校精神科学講座助教、ロンドン大学キングスカレッジ精神医学研究所心理医学部客員研究員を経て、現在、慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室助教。一般社団法人こころの未来・インスティテュート代表。医学博士。英国理学修士(疫学)および経営管理学修士(MBA)。精神保健指定医。日本精神神経学会専門医&指導医。日本医師会認定産業医。日本うつ病学会(フェロー)。国際対人関係療法協会認定スーパーバイザー。英国家族療法NHS認定治療者、スーパーバイザー&トレーナー(日本人唯一の資格保持者)。留学中にはIAPT(英国認知行動療法家育成コース)に日本人初としての特別参加。
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