- メンタルヘルスはなぜ重要?
-
--今、なぜこんなに「メンタルヘルス」が注目されているんでしょうか?
過重労働、パワハラ、いじめなどが自殺の引き金となるケースがマスコミで取り上げられたこともあり、労働環境の改善が、企業にとっての緊急課題となっています。社会経済生産性本部が 行うアンケートでも、「職場のメンタルヘルスが課題として重要である」と会社自体が明言してるほどです。
この背景には、さまざまな要因があると思います。まず、経営的な要因。各企業は、単純な少子高齢化による労働人口減に加えて、人減らしにより人件費は減らしたものの、その分一人ひとりに過重な負荷がかかるようになりました。すると、少ない人員で多くの仕事をこなさねばなりません。つまり、モティベーションを保ちつつ、活き活きと今以上に生産的に、効率的に働いてもらう必要が生じてきたわけです。 -
--昔と比べて、仕事の形が変化してきているのも、関係がありますか?
あると思います。昔は労働集約形、つまり第一次産業=製造業が中心でしたけれども、今はサービス業が増えましたよね。すると、こぞって顧客満足度を上げようとするあまり、感情のぶつかり合いが頻繁に起こっています(「感情労働」)。このぶつかり合いをいかに軽減していくかが、職場のメンタルヘルスの新しい課題でもあります。
そして、「組織の変化」。例えば、以前は社長をトップとした「縦型の組織」でしたが、最近では、変化の早さに対応するため、できるだけ個々人が専門性を持ち、それをネットワーク化した水平型にシフトしてきています。これが組織にどういう影響を及ぼすかというと、各従業員は、自身のスキルを絶えず磨き、エンプロイアビリティ(=自身が雇用されうる能力)を保持していないと解雇・配転させられるのでは、という不安を常時抱えるようになったわけです。そこに起因するストレスもありますね。
厚生労働省が、1982年から行っている労働者の健康状況調査によると、今や6割前後の人がストレスや不安を感じているという状態です。つまり、現代の職場では、ストレスと無縁でいる方が難しく、ストレスと上手に付き合う方法が重要視されている、というわけです。
- 仕事と従業員の理想的な関係「ワーク・エンゲイジメント」
-
--「ワーク・エンゲイジメント」を高めるには、どうすればいいのでしょうか?
従来の産業保健や、職場のメンタルヘルスでは、病気のゼロ状態をつくるのが、ある意味理想的な状態でした。しかし、今は少し違います。働く人々それぞれが、病気がないのはもちろん、自律的に活き活きと働けるようにならないと、組織としても、個人としても生き残っていけません。
そこで、2001年に提唱された概念が「ワーク・エンゲイジメント」です。働く人が、自分の仕事にやりがいを見出し、誇りに感じる。また、熱心に取り組む、仕事から活力を得て、活き活きとしている……そういう状態が「ワーク・エンゲイジメントが高い状態」です。
「ワーク・エンゲイジメント」は、もともとは、「バーンアウト」(燃え尽き症候群)の対概念として提唱された概念です。これまでのメンタルヘルス対策というのは、「バーンアウト」を含めた健康障害をいかに減らすか、という点にのみ焦点を合わせていました。しかし、今後のメンタルヘルスは、健康障害を減らす対策とともに、「ワーク・エンゲイジメント」を高めることにもっと目を向けなければなりません。 -
--「ワーク・エンゲイジメント」を高めるには、どうすればいいのでしょうか?
「ワーク・エンゲイジメント」を決定していく要素にはふたつあります。ひとつは、「個人資源」、もうひとつは「仕事の資源(組織資源)」と呼ばれるものです。このふたつが充実することで「ワーク・エンゲイジメント」が高まり、多くのポジティブな結果をもたらします。ポジティブな結果とは、例えば、仕事の満足感が高まったり(職務満足)、組織への愛着が高まり、仕事の生産性が向上することなどがそうですね。
次のページでは、「ワーク・エンゲイジメント」を高めるふたつの要素のうち、「個人資源」と、そのお手軽なアップ方法についてご紹介します。
