刺股(さすまた)という道具を知っているだろうか?
刺股は、長さ2メートルほどの棒の先にU字型の金具がついた道具。U字部分で相手の胴体部や首などを押さえ、襲ってくるのを阻止したり、うつ伏せの相手を押さえつけるものだ。
ルーツは室町時代の武器で、袖搦(そでがらみ)、突棒(つくぼう)とともに江戸時代に犯罪者を捕らえる「捕物」になくてはならない道具として使われた。
現在でも埼玉県警が96年に使い方をマニュアル化し、持ち運びが便利な伸縮式タイプが考案されるなど、警察では刃物を所持する犯人と対峙した際に使われている。
この刺股が学校の防犯道具として注目されている。
2001年に大阪の小学校内で発生した児童殺傷事件を受け、全国各地の教育機関でさまざまな防犯上の取り組みがなされた。その中で刺股が全国的に広まったのだ。
「
新聞・雑誌記事横断検索」でキーワードを「(刺股 OR さすまた) AND 学校 AND 防犯」として検索を実行すると、約300件の記事がヒットする(2004年11月現在)。
また地域別に見ると、事件が起きた大阪に近い地方紙ではヒット数が多く(中日新聞:44件、神戸新聞:27件)、反面、沖縄の地方紙である琉球新報ではヒット数が少ないなど(南日本新聞:1件、琉球新報:2件)地域によって扱われた記事の数に違いが見られるのが特徴的だ。
●学校防犯用具への刺股利用
学校の防犯関連の記事として刺股が登場するのは、大阪の事件発生1週間後で、茨城県新治村が村内5箇所の幼稚園、小学校に刺股を配備した記事だ。記事によると、同村教委では当初、掃除用のモップを防具として活用することを考えたが、県警のアドバイスを受け刺股の採用を決めたという。
この刺股を使い、教員が侵入者を取り押さえる訓練をする様子がメディアで報道された事で、茨城県内や東京都、神奈川県の小学校から刺股に関する問合せが県内で唯一刺股を製造していた「常陸板金製作所」へ殺到。各地の教育機関が採用を決めた事から刺股は全国的な注目を集めることになった。
この刺股の配備は年々進んでおり、刺股を各校1本ずつ配備する地域も多くある。検索した記事の中で特に目立ったのが東京都杉並区。ここでは2004年の補正予算で「子どもの安全確保対策」を盛り込み1億4千万円を計上し、警報システムや他の防犯用具に加え、刺股を各施設へ配備する事とした。
またこの杉並区の安全対策では、区立の小中学校などの全教職員約4000人に催涙スプレーを配布し、校内で常に持ち歩き防犯に努める方針だという。全職員が催涙スプレーを持ち歩くケースは全国にも例がなく、この件について山田宏区長は「学校内で事件が増えた今、常識を超えたレベルでの対策が必要だ」とコメントしている。
こうした防犯器具の充実は頼もしいが、子どもとのコミュニケーションを取る上でやや物々しい感もある。また防犯器具の導入に加え監視カメラの設置をする地域もあり、学校の要塞化に対する批判の声もある。そこでは多くの大人が防犯にかかわれる為にも地域に開かれた学校を作る重要性も指摘しており、実際ボランティアによる見回りや、近所間での声掛けを強くしようとする動きも多くある。
とはいえ、これらに共通するものは「自分で子どもを守る」「地域で子どもを守る」という「子どもを守る」意識であり、安全で開かれた学校作りは自治体・学校機関で常に模索するテーマだ。
大阪で起きた事件を繰り返さない為にも、防犯器具による万全な対策を整えると同時に、各人と各地域で「子どもを守る」意識を高めることが防犯活動への第一歩かもしれない。