足の健康保ち、元気なお年寄りでいてほしい

整形外科医は、患者の足を診ることが多い。医療法人社団東京育明会の理事長で、整形外科医師の近藤光一さんは、「顔など目に見えるところは丁寧にケアするのに、靴の中に隠れている『足』のケアは、なおざりにされていることが多い」と話す。しかし、足は健康の源だ。小さなトラブルが元で、歩かなくなり外出を控えるようになり、体力の衰えにつながることもある。それが顕著なのが高齢者だ。

近藤さんは、日ごろ医師として高齢者の足を診るたびに、きちんとケアされていないことが多いのを見て心を痛めていた。ある時には、「爪が伸びすぎていて切れない」と、訪問介護士に連れられて、在宅で介護を受けている高齢者が病院に運び込まれた。「このお年寄りの足の爪は、3、4センチくらいもあり、あまりに伸びてくるりと弧を描いていました」と近藤さんは振り返る。初めは爪が長すぎて自分で歩けなかったが、専門の器具で爪を切って整えたところ、自力で歩けるようになったという。

近藤さんは、思い描いていた理想を、2001年4月、横浜市に開業した介護老人保健施設「都筑シニアセンター」で実現させた。「都筑シニアセンターでは、お年寄りにフットケアのサービスを提供することで、みなさんが自分でどんどん歩いて健康を保っていただけるためのお手伝いをしたいと考えました」と近藤さんはその思いを語る。同センターにはフットケアの専門スタッフがおり、高齢者の歩行能力の安定を図っている。

同センターのもう一つの特徴が、24時間使える「足湯」だ。 都筑シニアセンター開業前に、老人介護やフットケアの状況をドイツに視察しに行った近藤さんは、ドイツの温泉地バーデンバーデンで、お年寄りが気持ちよさそうに足湯に浸かっている様子を見て、強く感銘を受けたという。そこで、同センター屋上の見晴らしのいい場所などに、バーデンバーデンのこだわりを再現した足湯を設置した。

          バーデンバーデンのこだわりを再現した足湯

「足湯の浴槽には湯量を調節するための栓がついていますが、通常のものだと小さくてつまみにくい上、かがんで取る必要があるので、お年寄りにとっては使いづらい。バーデンバーデンのものは、栓が木製の長い棒なので、かがむ必要がなく、お年寄りもつかんで抜いたりしやすいのです。これが日本にはなかったので、特注で作りました」と近藤さんは説明する。