本当に好きなものだからこそ、人に伝わる
――「好きなテーマしか描かない」と決めているそうですね。
ハロルド その時に面白いと思えるもの、描きたいと思えるものを描くということですね。「BECK」でテーマにした音楽も、やはり自分が好きなものの一つだったのですが、音楽はマンガにするのが非常に難しいと言われていたネタだったんです。何しろ、マンガから音は出ませんからね。本当の意味で音楽をマンガで表現することはできないんですよ。業界でも、「音楽ものは絶対に当たらない」という定説がありました。
なぜそれをやったかというと、「月刊少年マガジン」の編集長の軽い冗談を僕が真に受けたからです。ある時、「作石さん、音楽が好きなら、音楽のマンガを描いてみたら?」と言われて、「これはチャンスだ」と思ってしまったんですね(笑)。好きな音楽をマンガの題材にできるのはラッキーだぜ、くらいの感じで始めましたから、ヒットを狙おうとか、長く続けようというような気負いは全くありませんでした。
――自分が好きなものが常に他人に受け入れられるとは限らないですよね。そのバランスはどうお考えですか?
ハロルド 個人的には、「自分が本当に好きなものだからこそ、人に伝わる」という思いがあります。しかし一方で、マンガを描くというのは一つの商売ですから、雑誌に載せてもらって、読者に支持されて、連載が続いて、売り上げがあって──というところを踏まえないで好きなことだけをやっていたのでは、マンガを描くということ自体できなくなってしまいます。商売としての最低限のところを押さえたうえで、好きなようにやらせてもらう。そういうことをかなり厳しく意識しています。マンガ家はちょっと油断すると、つい自分だけの趣味の世界に走りがちですからね。






