「個」を磨き、自らの価値を高めよ!
吉越浩一郎氏(吉越事務所代表)
吉越浩一郎氏は、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの前経営者として次々に新しい施策を導入し、同社の売り上げを100億円から500億円へと、5倍に拡大させることに成功しました。すらりとした長身、温厚な人柄、巧みな話術と、人を引きつけてやまない魅力に溢れた吉越氏ですが、こと日本の企業や社会の話になると舌鋒は鋭さを増し、歯に衣着せぬ物言いで現状を次々に裁断してみせます。吉越氏に「仕事」「会社」「人生」について伺いました。
仕事だけが人生ではない
――吉越さんが仕事をするうえで、最も大切にしてきたことは何ですか?

吉越 ワークライフバランスということでしょうね。といっても、大げさなことではないんですよ。たまたま女房がフランス人だったので、彼女のやり方に合わせていたら、そういうことになっただけです(笑)。
以前、残業が非常に多い会社で働いていたことがありましてね。外資系企業だったのですが、日本人のスタッフが多くて、大変日本的な仕事をしていたわけです。仕事が終わるのは9時、10時。その後飲みに行って、家に着くのは午前様。その間、家に電話をかけもしない──。これって日本の会社員にとっては当たり前の働き方ですよね。日本だと「仕事だから」と言えば、奥さんもあきらめちゃう。しかし、うちの女房はあきらめなかった。料理をして待っているのに旦那がなかなか帰ってこないということがどうしても許せないわけです。仕事と家庭に関する断固たる哲学が彼女にはあったんですね。だから私も、ワークライフバランスについて考えざるを得なくなったというわけです。
──具体的に「ワーク」と「ライフ」の関係をどうお考えですか?
吉越 いつも言うことですが、人生はいくつかの領域に分けられると思うのです。「健康」と「家庭」と「仕事」、それから、仕事をリタイアしてからの生活で、それを私は余生ならぬ「本生(ほんなま)」と呼んでいます。人は「本生」を楽しめるように人生を設計しなければいけない。では、そのためにはどうすればいいか。健康を大切にし、家庭を大切にすることです。仕事をリタイアしてから残るのは、自分の体と家族だけなのですから。
しかし、実際にはどうですか? 毎日3、4時間しか寝ずに働き続けて、ストレスと疲労で50代で死んでいく人がたくさんいるでしょう。仕事を辞めてすぐに死んでしまう人もいますね。それが人生ですか? 多くの日本の会社は、働いている人の人生の犠牲の上に成り立っていると言っても過言ではありません。もちろん、働いている方にも責任はあります。自分の健康は自分で管理しなければならない。健康に注意し、常にやる気を充実させ、能力を最大限発揮して効率的に仕事に当たり仕事では誰にも負けない。本来ならそうして限られた時間内にバチッと仕事を終えて、疾風のごとくサッとオフィスを後にし、その後の時間は家族と過ごし、自分の時間を生きる。それが、あるべきビジネスパーソンの姿であり、あるべきワークライフバランスの形でしょう。そうは思いませんか?

