目標としてきたのは、“個人向け”のSPIDER

「『SPIDER PRO』を使うことで、自身でも気づかなかったテレビの楽しさにハマっている」(有吉さん)

メディアや広告では、テレビに一日中張り付いて、露出や情報を読み取っている場合もあります。そうした企業からは、喜びの声が多かったのでは?

有吉 もちろん、「便利になった」という声もいただいていますが、「不可能なことができるようになった」という声も多くいただいています。人を張り付けると、人件費としてコストはかかるし、人間なので見逃しもあります。しかし、弊社ではプロのサービスとして、99%の精度で漏れがないことを保証しているんです。先ほども「ハードウェアメーカーではない」と言いましたが、SPIDERの売りはハードウェアとしての性能よりも、こうしたサービスなんです。

広告やマーケティング、メディア以外でも活用している企業が多いようですが、どのような使われ方をされているんですか?

有吉 例えば、危機管理。プラントや建設系の企業、空港や鉄道などのインフラ企業で、重要なのがニュースで報道される事故情報ですね。火災や事故といった報道内容に、間違った情報が流れないかをチェックされています。

あと、政治家や霞ヶ関でも利用されていますね。テレビで自分の発言がどのように紹介され、批評されているのか。確認することで、次回からの発言を改善しているようです。正直、私が考えていた以上に使い方の拡がりがあり、予想外でした。

今でこそ多くの企業に利用されているSPIDERですが、導入事例のない販売当初の売り込みは苦戦したのでは?

有吉 最初は、なかなか売れなくて苦しかったですよ。売り込み先へ本体を持って行き、使い方をディスカッションしたり、1週間置いて使ってもらったり…。やはり、実際に触っていただくと良さを実感していただけますね。

現在は法人向けのみですが、初めからSPIDERは法人向けとして想定していたのでしょうか?

有吉 我々の目標は11年前から個人向けで、企業向けは途中段階に過ぎません。実績のまったくない商品をいきなり個人向けに売っても、売れるかどうかはリスキーな賭け。ベンチャー企業なので、経営を安定させるために実績やブランド力が必要です。そのため、まずは法人向けから始めました。テレビや映像のプロが「欲しい」「素晴らしい」と言ってくれるものを目指さなければ意味がない、と。

そのおかげか、テレビ番組や雑誌で芸能人の方が褒めてくれましたね。テレビ業界内での評判が上がることで、一般の方からも「安かったらいいのに」「法人向けだけ? 個人向けの出ないかな」という声をいただけるようになりました。

SPIDERの操作画面。決定ボタンと十字キーでほとんどの操作が可能。

そういった経緯で、2011年末に個人向けのSPIDERを販売するに至ったわけですね。以前、個人向けに限定200台だけ「SPIDER zero」を販売したのは、個人向けSPIDERをメインにするための取り組みだったのでしょうか?

有吉 そうですね。法人向けばかり販売していると、法人にとってのニーズばかりを追い求めてしまいます。しかし、我々の究極の目標は個人向け。なので、200台限定ですが、モニターのような感じで使っていただいて、ご意見を伺っています。

年内に発売予定の個人向けは、法人向け「SPIDER PRO」より価格が安くなるそうですね。そうなると、スペックや使える機能が落ちたり削られたりするのでしょうか。

有吉 個人向けだから価格を抑えるのは当然ですが、だからといってスペックや機能を落とすという考え方は、我々にはありません。先ほども説明したように、我々はサービスの会社。なので、個人向けのサービスをフルスペックで考えて提供するだけです。企業向きのデータやマーケティング情報など、「個人がテレビを楽しむうえでいらない情報」はできるだけ表示されないようにして、家庭でテレビをもっと楽しめるような機能を増やしていきたいですね。

例えば、現在でも実装されている「コンシェルジュ」という機能は、ユーザーが「面白い」「興味深い」と思った番組を紹介し合っています。みんなが一言感想をつけておススメし、番組を開始からではなく、一番面白いところから再生する。番組のどこがどう面白かったか、という感想を共有できるんです。そこからさらに「つながり検索」機能を使うことで、気に入った出演者がほかにどんな番組やCMに出ているのかを知り、視聴できます。テレビをどんどん見るきっかけになるんじゃないか、と思います。

最後に、今後の展望を教えてください。

有吉 2011年は、個人向けや地デジ化に対応していく年。さらに、関東と関西のみだったエリアが、四月から名古屋と札幌、福岡まで広がります。地上波デジタル放送用のSPIDERは、法人向けが2011年の4月、個人向けが年末に発売予定です。10年間苦労したことで、やっと成果が見えてきました。 個人向けのSPIDERは、まず100万台の販売を目標にしています。やはり、我々はサービスの会社なので、本当は大手のハードウェアメーカーがSPIDERを搭載した機器を作ってもらえればありがたいですね。10年前では、企画書で説明していたので現実味がなかったSPIDERですが、今ではここまで考えを実現できていますから。

■今回の取材先プロフィール

株式会社PTP




URL:SPIDER PRO http://www.ptp.co.jp/spiderpro/

URL:地デジ版SPIDER公式ページ http://spidertv.jp/

本社所在地
東京都渋谷区代々木5-59-5 東信代々木ビル
http://www.ptp.co.jp/